(362)初めて走る「尼っ子リンリンロード」-2

防波堤にふたりの兄ちゃんが釣竿を垂らし、何の話かは知らんが盛り上がっている。
あまりにも楽しそうなので、「俺もよしてや」と言いたくなったが、どう考えても不審者扱いされるだろう。
彼らと彼らが止めた原付の後ろを通りすぎ、尼崎市立海釣り公園から次に進む。

武庫川沿いにあるゴルフの打ちっぱなしまで戻って、工場や倉庫に囲まれた道へ。
それなりに見慣れた景色。
ちょこちょこトラックは走っているが、交通量が少なく走りやすい。
ただ、「車道、まぁまぁガタガタやで」と感じることもあった。

自然に「殺風景やなぁ」と思う。
ネットでこのルートをチェックした時、「工場萌え」という言葉を生まれて初めて目にした。
まぁ、工場萌えする人にはたまらないのだろうが、俺には全く理解も共感も出来ない世界。
「いっこも萌えへんやんけ」。
独り言を呟きながら、クランクを回す。

マップを確認すると、運河を囲む広場に出るはず。
「多分、これのことなんやろけど…」。
枯れ草に囲まれた、いかにも「不法投棄して下さいね」とアピールするような光景。
よく言うと「わびさび」。
ストレートな印象としては、「退廃的」。
直感で「大丈夫か…?」。
不安になった。

寂しく荒れた世界へ、恐る恐るペダルを踏み進む。
「これ、嫌やなぁ。走りにくい」。
下を見て、溜め息をついた。
タイルの道だ。
スリップするのが怖い。
ゴールに向かう道からは逸れるが、南東に位置する尼ロック(尼崎閘門)へ向かおうと考えていた。
が、タイルの道を無駄に走りたくないので却下。

ゴールである北東の阪神尼崎へ向けて、運河沿いを進んだ(どっちにしろ、しばらくはタイルだが)。
「よし、タイル区間が終わった」と思うと、次は板。
ペダルを踏み、ホイールが回るたびに「ガタッ」「ガタッ」と音がする。
「ほんまに大丈夫か?」。
目線を下に向けながら、不安を感じつつ進むと、板の補修だろうか?
板の上に板を張り付けているではないか。
「これ、ほんまのほんまに大丈夫か?板を貫通して下の運河に落ちるってこと、無いよなぁ…?」。
心配性の俺は、最悪のケースが頭をよぎり、なるべく板を破損させないように「ゆっくりと、ゆっくりと」を心掛ける。
ロードバイクに乗り始めてから、交通量の多さや雨によるコンディションの悪さで神経を磨り減らしたことは幾度もあったが、「道が板」で精神的に追い詰められたのはこの時が初めてだ。

とまぁ、無駄にスリルのある道だが、所々にベンチもあり、サービス精神も感じる。
また、工場と運河の殺風景な景色でも、それはそれで味わい深い。
「工場萌え」がわかる人なら、なおさら。
「俺はまだまだやけど、次に来る時はおにぎりでも買って来ようかな」と少し思った。
俺も少しは共感できるようになったのかも知れない。
「工場萌え」に。

平日の昼間なので、自転車に乗っている人も歩いている人も少ない。
たまに、自転車に乗ったお爺さんとすれ違ったが、基本的には人を気にせず走ることが出来る。
その点も、尼っ子リンリンロードは良い面だろう(まぁ、単純にマイナーなコースってだけなのかも知れないが)。

板を刺激しないように気を付けてクランクを回すと、板が終わり、そして見えてきた。
下調べをして、唯一「これ、面白そう」と思った「出会い橋」。
普通の橋と違い3方向を結ぶ橋で、ジャングルジムの様な風貌。
俺はサドルから降りる。
橋の手前で1分ほどじっくり観察した後、20秒で渡り終えた。
「見た目は興味をそそるけど、まぁ、橋やな」。
「うん、橋やな」。

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