(371)なにわ自転車道を走る~喉の渇き~

土手の上から淀川を一望し、来た道、なにわ自転車道を引き返す。
わけだが、俺はもう一度、念に入りに周辺を見回した。
「自販機無いかな?」と。

そもそも、家を出た時点で、ボトルに入っている水の量が少ないのは把握していた。
底から3㎝?4㎝?ぐらい。
「やばいな」。
「まぁ、走ってる最中に自販機を見掛けたら水を買って補充したらええわ」。
そう考えていた。
が、走り出すと赤信号以外の理由で脚を止めたくない気持ちが勝ち、そのままなにわ自転車道の一部、堤防沿いの入口まで辿り着いてしまったのだ。

入口の手前にある信号を渡ると(逆方向になるが)、チェリオか何かの100円自販機がある。
それも知っていた。
でも、「ちょっとした距離やけどロスになるわ」。
パス。

なにわ自転車道に自販機が無いことも知っていた。
知っていたが、クランクを回した。
出口(堤防の上に上がるスロープ)を見るたびに、「本気でやばくなったら上がろう。自販機で水を買おう」。
そう思っていた。
しかし、クランクを回す脚が止まらない。
追い風のおかげで走り心地が良いので、「このまま進みたいな」。
「仮に適当なところで上がっても、すぐに自販機があるとは限らんし」。

折り返し地点に設定した淀川まで行けば、自販機があったような気がしたが、無かった。
「え、工場の前に何かの安い自販機無かったっけ!?」と目を疑ったが、無い物は無い。
ボトルに残った水は、底から1㎝。
不安に押し潰されそうだ。

俺は一応、中途半端な野球経験者。
クソ暑い中で練習をして「水を飲むな」という指導を受けていた。
拷問も教育になる狂った時代ですわ。
まぁ、そのせいか、俺は喉が渇くのが怖い。
水が無いのは怖い。
とか言いながらも、走ることを優先したわけだが、そんな自分に「お前はアホか?」と言いたくなった。
「はい、アホです」。

確か、家を出たのは15時半頃。
淀川に着いたのが16時半頃。
「このペースやと、暗くなる前に家に着くな」。
まぁ、些細なことだが、ひとつでもポジティブになれる材料があり、気持ちが少し楽になった。
が、体は楽にならない。
向かい風…。
喉が渇いた…。
「夕日が綺麗だね」などと感傷に浸っている場合ではないので、「こんな悲惨な状況下で頑張って脚を回している俺、耐えている俺、好き」。
「自分、大好き」を心の支えにして走るしかない。

「今、時速25㎞かぁ」。
「あぁ…、23㎞かぁ…」。
風向きの影響で、往路の倍ぐらい負担を感じる復路。
このペースだと、さらに速度は落ちると思われる。
このタイミングで言い聞かせる。
いくぞ。
せーの、「自分、大好き」。

何度目かの「自分、大好き」でサイクリングロードが途切れ、堤防沿いの道へ。
「あら、思ったより早く終わったな。苦痛を感じる時間が」。
冷静に考えてみると、なにわ自転車道の往路は15㎞程度なので、復路も大した距離ではなかったのだ。

西宮市に繋がる2号線に出た。
家がすぐそこにある感覚。
「さぁ、西宮まで走ろうか」の前に、自販機で水を買う。
普段なら、ペットボトルを一口か二口飲んでから残った分をボトルに流し込んでいたが、この時ばかりは500mlを一気に飲み干した。

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