(374)日帰りで鳴門へ~屋島に決定~

「寒い…」。
「眠い…」。
「『走りたい』という気分には、まったくならん…」。
でも仕方が無いのだ。
鳴門まで来て、1mも走らず家に帰るのはおかしい。
どう考えても。

朝日が差す渡船乗り場の駐車場。
「あぁ、なんて綺麗な景色なのだろう」などと感動する気分でもなく、ただただ「面倒くさ」。
車のトランクからロードバイクを下ろし、そして引っくり返して砂利の上に置く。
もう一度、「あー、面倒くさ」と思いながら、前輪をフロントフォークにはめようとした時、「その自転車で、いつもどこまで走るん?」。

「誰?」。
振り返ると、赤ら顔のおっちゃん。
「多分、日に当たる仕事をしてる人なんやろな」。
「このシチュエーションやから、渡船の船頭さんか?」と推理した。
帰りの車の中で、おっちゃんの話をNさんにしたところ、ズバリ正解。
渡船の船頭さんだった。

今まで鳴門に行くたびに、Nさんと船頭さんが楽しそうに話しているシーンを何度か目にしたが、釣りをしない俺にとっては「ただのおっちゃん」。
ハイレベルな赤の他人と認識していたので、顔を覚える気も無かった。
が、まさかだ。
その船頭さんから話し掛けられる機会が訪れるとは。
内心、少し驚いたよ。

「あ、あぁ、いつもは高松に向かって走ることが多いです」。
「ほぅ、高松?遠いなぁ」。
「まぁ、この自転車やとなんとかなりますわ」。
「高松のどこ行くの?」。
人柄の良さそうな船頭さんの雰囲気に引き込まれ、俺は自然と緊張を緩めた。
「高松の中心、高松駅や高松城まで走ることもあるけど、交通量もね、信号も多くなるので、市街地まで行かずに、手前の屋島で折り返すこともあります」。
「え、屋島行くの?あの坂登るの?」。
「いえ」。
船頭さんに、「50数㎞走ってヒルクライムして、また50数㎞走って帰るんはしんどいですわ」とか、「俺、登り嫌いなんです」と言うと、話がややこしくなりそうな気がした。
ので、「理由はどうであれ、俺は坂を登らない」と意思表示。

「サッカーの前園がなぁ、最近、この辺りをよく走ってるんやわ」。
「へー、前園は四国の人なんですか?」。
「違うと思うねぇ。けどな、自転車で八十八ヶ所巡りしててなぁ、テレビでやってるわ」。
「うち、テレビあらへんから知らんわ」と思いながらも、笑顔だけ返す。
会話終了。

「船頭さんとの話がええ切っ掛けやと思って、とりあえず屋島まで向かおうか」。
「うん、屋島とは何かしらの縁があったんや」。
この日、予定を決めていなかった俺としては、そう考えると都合が良い。
また、渡船乗り場から高松方面(屋島も含む)へは、ルートがシンプルだし何度も走った経験がある。
気持ちとしては楽。

「まぁ、それはそれとして」と、フロントフォークに前輪をはめる。
次に、バックパックからサイクリングに必要なものだけ(OTTO LOCK、飴とハイチュウ)を取り出し、サコッシュに放り込んだ。

サコッシュを肩に掛け、カスクを被りグローブをして、「とりあえず、国道11号線(高松方面への一本道)まで出よ」。
サドルに跨がりクランクを回す。
と、すごく不快。
道がガッタガタ。
「はぁ…。寒いし眠いし、道はこんなんやし…」。
小言も言いたくなる。

1㎞近く進み、11号線に出た。
「お、なんか久々に信号を見た気がするわぁ」。
ここから緑に囲まれた道を少し登る(ここに辿り着く前から、まぁまぁ緑に囲まれた道やったけどね)。

そして、一気に下ると海が見えるのだ。
「うほっ」。
毎回、心の中で叫ぶ。
俺は泳ぐのが苦手。
いや、率直に言うと嫌いなのだが、海を見ると反射的に感じる。
「海が見える景色は、どこも綺麗」。
↑文末にハートマークを付けようか悩んだが、やめておく。

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