(375)日帰りで鳴門へ~引田~

高松方面へ海沿いの道を走る。
大阪や神戸だと、考えられないぐらい信号が少ない。
普段なら、飛ばして走る車に真横を抜かれるとヒヤッとするが、ここは道が広いおかげで気持ちに余裕が持てた。

「さぁ、気合いを入れてクランクを回すぞ」。
「お、時速40㎞か。いいねぇ」。
「うん、気持ち良すぎる…!」。
自然とそんな快感を覚え、フルパワーで走りそうになったが、「待て!」。
快楽に溺れて走った結果、帰りにくたばった経験が俺にはある。
「繰り返してはならない…」。
「ここは自制すべきだ」。
走りやすすぎる道ではあるが、欲望を抑え、敢えてゆっくり走る。
うん、敢えて。
敢えてね。
もうね、この時点でね、自分に酔いそうになった。

右手に広がる海。
脚を回しながら、「いい眺めやわぁ」。
高揚感が高まる。
そして、以前の俺なら「サイコー!」と心の中で叫びながら突き進んでいたが、ここでもう一度注意が必要だ。
少し先に、2つのトンネルがある。
三津トンネルと引田トンネル。
勢いに任せて走り、トンネルに入ったのはいい。
が、途中で前後のライトを点け忘れていたことに気付き、ヒヤッとした経験がある(何度も)。
「でもね、今日の俺は違うよ。俺は俺なりに学習能力があるよ(何年もかかったけど)」。
そう思い、三津トンネルの前で停止。
「後ろのライト、つけにくいな。手がつりそうやわ」。

2つのトンネルを抜ける。
ぽつぽつと家や商店が視界に入ってきた。
まぁ、はっきり言って田舎なのだが、「どうも違うよな」。
「俺が知ってる景色じゃないよな」。
「いつも感じる雰囲気じゃないよな」。
何かしっくりこない。
いつもは静けさを感じる道。
しかし、この日は違った。
感覚として。

「何が違うのか?」。
クランクを回しながら、俺なりに考える。
車はちょこちょこ走っているが、歩道は無人。
「うん、それはいつも通り」。
なのに違和感。
何故か静けさを感じない(かと言って、活気があるわけでもない)。
「もしかしたら、時間帯の問題?」。
Nさんが渡船に乗り、俺が走り出すのはいつも6時。
しかし、この日は車の中でゴロゴロしたので出発が30分遅れた。
さらに、自制しながらゆっくり走ったので、この小さな町に差し掛かったのは、30分から1時間ほど遅い。
「時間帯で雰囲気が変わるのか」と妙に納得しながらも、正直なところ「どうでもええわ」。
サイクリング中、脚を回しているだけなので頭は退屈になり、「どうでもええか」ってことを無意識に考えてしまう。
いつもそうだ。
ちなみに、この記事を書きながら俺は思う。
「ほんまにどうでもええよな」と。

東かがわ市の引田という町を走る。
特に何があるとか、何が見たいというわけではない。
ただ、屋島を折り返し地点に設定すると時間に余裕がありすぎるので、「ちょっと駅前をうろうろしよか」と思った。
11号線を左に逸れて、のんびり走ってみたところ、「田畑やな」。
特に感慨深くなることも無く、11号線に戻って高松方面へ、屋島へ進む。

「歩いてる人、まったく見掛けへんよな」。
ちょこちょこ車は走っているが、歩道は無人。
相変わらずの景色だ。
が、「うっそぉん!」。
「人がおる!」。
少なく見積もっても20人。
行列。
「何や?何や何や!?」。
気になって徐行しながら彼らの近くを走ると、郊外型の大型店舗、薬局に並ぶ人たちだった。
「あぁ、コロナの影響かぁ」。
「マスク買いに来てるんやろなぁ」。
「このご時世、どこも同じなんやわ」。
俺はクランクを回す。

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