(388)ロードお遍路の予行演習~大日寺が遠のく~

次に目指すは、「四国霊場第4番札所 大日寺」。
12号線を真っ直ぐ進み、ローソンがある交差点を右に曲がると、北側に山。
登りが続き、その先に大日寺。

ルートを頭に入れて、俺は12号線を走った。
「お、次の交差点にローソンがあるな」。
右に曲がり、山を正面に見て登り始める。
道の両サイドには住宅が連なり、「ネットで見た大日寺の画像は秘境感があったけど、実際はそうでもなさそうやな。熊とか猪に遭遇しなくてすみそう」。
安心感を得たおかげで、クランクを回すことに集中できた。

とりあえず、第一段であろう坂を登り終え、車道の脇に足を止める。
「もし万が一やけど、道を間違えてたらダメージがでかい。念のためにGoogleマップ」。
バックポケットからスマートフォンを取り出し、現在地とルーを確認する。
「あぁーー!!」。
間違えていた。
俺が曲がった、ローソンのある交差点の先に、もうひとつあったのだ。
角にローソンのある交差点が。
「もうひとつ先やったんか…」。
「なめていた…。俺は田舎の道をなめていた…」。
都会とは違い、あっちこっちにローソンがあるとは考えもしなかった俺は、はっきり言って愚かだった。

「どうします?」と俺に聞く(俺が)。
登ってきた坂道を下りて、もう一度12号線に戻り、予定していたルートで大日寺を目指せばいいのか。
「それはあかんわ」。
「もったいないわ」。
せっかく登ってきた道を下るのは、努力の無駄になってしまう。
避けたい。
ならばと言うことで、間違えた道をこのまま進み、なんとか大日寺の近くまで出れるルートがないか調べたところ、あった。
「よかった…。仏様のお導きだ」。
心からそう感じた(結果的には、妨害が入り導かれなかったが)。

大日寺へのルート(改)は、山に囲まれた道を進む。
信号は極端に少なく、車もほとんど走っていないので走りやすい。
ただ、登ったり下ったりを繰り返すため、トレーニングには良いと思うが、初めて走るアップダウンの道は手の抜きようがわからないので困る。
徐々に疲れてきた。
本音として、「ここで脚を消耗したくないよな」。

走りながら、「ずっと右手に見えるのは何やろ?」と思う。
「公園?」。
「運動場?」。
「え、『あすたむらんど』?」。
えらく広大な敷地のようだが、「『あすたむらんど』って何やねん?」。
「何をするところやねん?」。
「まず、『あすたむ』って何語やねん?どういう意味やねん?」。
くだらない独り言を言いながら脚を回していると、少し楽になった気がする。

それなりに大日寺の近くに来たようだ。
信号は青だったが渡らない。
進むよりも、交差点の歩道でGoogleマップを念に入りに確認したい。
「もう、道を間違えるんは嫌やわ」。
「特に登りが絡むところで」。
うまい具合に俺がイメージしていた地点に着いたようで、「後はこの信号を右に曲がって、北に上がると登り。その先に大日寺。OK」。
とその時、俺の右手、信号待ちをしている車からクラクションを鳴らされた。
「何で?」と思ったが、俺は何も迷惑を掛けていない。
無視していると、またクラクション。
車の方に目をやると、運転手のおっちゃんが左から右へ、左から右へと手を動かしているではないか。
何かのサインか。
「青信号なんやから渡れよってことか?」。
「渡るも渡らんもこっちが決めることやのに、鬱陶しいなぁ」。
そう思いながらしぶしぶ横断歩道を渡る。
どうも違和感があったが、「あ、そうか」。
「大日寺に行くんやったら、こっちから行った方がええでというサインなんだ」。
四国の人はお遍路さんに優しいという噂を聞いたことがある(お遍路経験者の飲食店経営Fさんから)。
「なるほど」と、おっちゃんの車の前を通りすぎる際、俺は一礼した。

「大日寺への俺が想定したルートとは違うけど、地元民が知ってる裏道を指示してくれたんや」。
これまでの疲れが取れるような地元民の優しさを感じ、俺は軽くクランクを回した。
「ありがたやぁ」。
「ありがたやぁ」。
登りがあって下り、登りがあって下り。
普段の俺なら「かったるいな」と感じるが、地元民のご厚意が後押ししてくれる。
「少々登りがきつくても、俺は行くよ。大日寺に」。

指示された道をそれなりに登り、そして進んだはずなのだが、なかなか大日寺にたどり着かない。
「ほんまに合ってるんか?」と疑問を覚える。
ただ、「それ自体が失礼だ」とも思う。
「ぶっきらぼうに見えても、実は親切な気持ちで大日寺への道を教えてくれたおっちゃんに失礼だ」。
「あのおっちゃんを疑うとは、俺は邪念の塊なんだ」。
反省するしかない。

が、山沿いの道の端に看板が見えた。
「安楽寺まで××㎞」と。
見間違えたと思いたいが、はっきりと書いてある。
「安楽寺まで××㎞」。
安楽寺とは、「四国霊場第6番札所 安楽寺」。
俺の予定では、4番札所の大日寺と5番札所の地蔵寺に行った後に安楽寺…なのだが…。
来た道を戻ろうにも、またアップダウンの道だ。
抵抗がある。
「もうええわ」。
俺はそのまま安楽寺に向けて脚を回した。

そっれしても、腹が立つ。
「あのおっさん、ボケコラァ!嘘の道を指示しやがって!」。
ムカムカして仕方がなかったが、家に帰り冷静になって思い返したところ、「あのおっちゃん、俺が大日寺と地蔵寺に行った後やと勘違いしたんちゃうかな?」。
「大日寺、地蔵寺に行った後やと思ったから、『次の安楽寺はこっちやで』と指示してくれたんちゃうかな?」。
そう考えるようになった。
俺にも少し仏様の心が宿ったのかも知れない。

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