(389)ロードお遍路の予行演習~安楽寺までの道のり~

ぽつぽつと家は目にするが、人は見掛けない。
コンビニも自販機も無い田舎道。
普段なら「トイレ借りられへん!」「水分補給でけへん!」と不安になる。
しかし、ここはあまりにものんびりした景色の中だ。
脚を回していると、逆に安心感に浸ってしまう。
心地いい。

「あ、何かおるな」。
道の端にふらふらと歩く雑種の犬が視界に入った。
「首輪してへんやん。野犬か!?」。
少しの緊張が走ったが、犬は俺に向かって吠えることもなく、こてっと地面にへたりこんだ。
犬ものんびりしているようだ。

サイコンに目をやると、時速20㎞ちょい。
信号などひとつも無く、車もほぼ走っていない。
ロード乗りにとってあまりにも走りやすい道だ。
ただ、そののんびりした空気が俺に伝染したのか、積極的にクランクを回す気にはなれない。
「天気もええし暖かいし、俺も犬と同じようにへたりこもか」。

さらに速度は落ち、時速10㎞台に突入した頃、左手に大きな施設が見えた。
久々に存在感がある人工物に巡り会えた気がする。
「おー、こんなところにパチンコ屋か?」。
前面がガラス張りなので、最初はそう思ったが、人の気配が一切しない。
「パチンコ屋にしては活気が無さすぎるな」。
「じゃあ、何屋やろ?」。
近付いて、足を地面につく。
閉まったシャッターには張り紙。
「コロナウイルスの影響でしばらく閉館します。技の館」とのこと。
 俺は頷きながら読んだが、「で、パチンコ屋じゃなく『技の館』って何?サブミッション講座でもしてるんか?」。
後日、調べると、地元の伝統工芸を体験学習できる施設だった。
まぁ、それはそれとして、張り紙に目を通している時、背後で音がした。
「ジー、シャー、シャー、ジー」と。
どこかで聞いた音。
とても身近に感じる音。
振り返ると、5人ほどのロード乗りが高速で集団走行しているではないか。
彼らを見届けて、複雑な気分になる。
「俺って何をしてるんやろ?」。
「せっかく徳島まで来たんや」。
「大阪や神戸にはなかなか無いような走りやすい道に今いる。真面目に走らなあかん」。
俺は目を覚ました。

次の目的地、「四国霊場第6番札所 安楽寺」に向けてバキバキと脚を回して進む。
つもりでいたが、 道がわかりにくく何度も立ち止まってGoogleマップを確認。
俺がいた位置から安楽寺までのルートは、大通り沿いではなく田んぼや畑の間の道をクネクネと曲がって進まなくてはならない。
遠くから見てもわかる目印になるような五重塔でもあってくれたら助かるのだが、まぁ、無いわけで。
「次の田んぼを左に曲がって、その次の次の畑の道を右に曲がって」。
「ややこしいわ!」。
と叫びそうになった時、畑仕事をしているおばさんから「こんにちは」と挨拶してもらった。
「あ、どうも、こんにちは」。
そして一礼。
俺は社交性に自信が無いので、もしかしてぶっきらぼうに感じられる返しをしてしまったのかも知れない。
が、それに対する反省よりも、知らない場所で知らない人に挨拶をしてもらったことが嬉しく、なんとも言えない気分になった。

田んぼと畑の間の道を曲がって曲がってした後、集落に入り、また集落の細い道を曲がって曲がって。
少し遠回りになったが、やっと安楽寺が見えてきた。

3番札所の金泉寺から6番札所の安楽寺まで、約10㎞。
相手にとっては善意でなのか、または悪意で嘘の道を教えたのか。
または、単に俺の解釈が間違っていたのかはわからないが、予定したルートを進めず、登ったり下ったりを繰り返し、脚も疲れた後にのどかな田舎道を走り、知らないおばさんと挨拶を交わした、この区間。
今回の旅で一番印象に残った。
「帰ってから記事に書こう」。
「読んでくれてる人に、『お勧めコースですわぁ』と紹介してみようか」。
「それやったら、記事にStravaのログを貼り付けたら親切やな」。
そんなことを考えていると、「あぁぁ!!」。
前回の鳴門~高松に続き、今回もStravaの記録を忘れていた…。

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