(391)ロードお遍路の予行演習~さよなら、法輪寺とたらいうどん~

「四国霊場第8番札所 熊谷寺」。
仁王門をくぐり、その先にある道路を横断すると小高い丘が見える。
「おぉ…」。
緑。
緑。
緑。
そして、お寺の施設が調和する景色。

1番札所からここまで進み(アクシデントにより4番と5番札所は抜きで)、格式の高さが感じられるお寺もあれば、庶民に親しまれる雰囲気を漂わせるお寺もあった。
それぞれ独特の趣があるわけだ。
ここ熊谷寺は、自然を身近に感じられるお寺。
家に帰ってから3週間ほど経ったが、熊谷寺の景色を思い起こすことがある。

「カッ、カッ、カッ」とクリートカバーを踏み付けながら、ロードバイクを押して丘の登り道を歩くと、左右に施設。
「じっくりと見て堪能したいな」と思うが、「いやぁ、あんまり深入りしたらあかんよ。今日の予行演習では」。
「本番のロードお遍路の時に見学させてもらおう」。
自制しながらも一歩一歩進む。
と、左手に塔。
立派な塔だ。
その脇に、「おおー、新崎人生!」。
白衣を身に纏い、菅傘を被り、金剛杖を手にしたお遍路フル装備の男性がいるではないか。
今回の予行演習で、初めて目にした。
「おおー」。
お遍路フル装備男性に目を奪われる。
塔どころの騒ぎではない。
「全身、白やで」。
「ただただ気高い」。
とても神秘的で見とれそうになった。
何か話し掛けたい気分にもなったが、お遍路さんと俺には見えない壁があるようにも感じられ、断念。
「冷静に考えると、白衣を脱いだらただのおっちゃんなんやろけど、オーラを感じるわぁ」。

「よし、次」。
向かう先は、「四国霊場第9番札所 法輪寺」。
距離としては、たったの2~3㎞。
近いのですぐに行ける。
が、俺なりに不安があった。
鳴門からスタートし、1番札所からここまでお寺が密集していた地域もあったおかげでスムーズに進めた(アクシデントにより4番札所と5番札所は除く)。
が、帰り時が問題だ。
「次も、その次も」。
そんなノリでほいほいと調子に乗って進むのはいいが、鳴門に戻らなくてはならない。
俺がクランクを回している間、山門の前でわびさびにふけている間、俺を車で鳴門に連れてきてくれたNさんは、筏の上。
真鯛を釣っている(釣れたかどうはわからないが)。
Nさんが釣りを終える時刻、おそらく14時~15時には鳴門の渡船乗り場に戻らなくては。

スマートフォンで時間を確認すると、11時過ぎ。
「まだまだ時間に余裕があるな」。
「でも、何があるかわからんから、なるべく早く戻るようにしよう」。
「早く着いても、Nさんを待つのはええ。Nさんを待たせてしまうよりも」。
で、「どこのお寺をゴールにするか。折り返し地点に設定するか」。
悩む。
9番札所の法輪寺も、その次の10番札所もそこそこ近い。
どこかで区切りをつけなくては。

田畑が広がる景色の中で、脚を回しながら「次の法輪寺で今日は打ち止めにしよ」。
時間的に余裕があるので、10番札所も行けそうだが、思い切って決断を下す。

田舎道の後、集落を進み、予定通りだ。
すぐに着いた。
法輪寺。
「長宗我部元親の兵火により消失~~」シリーズだ。
山門の前まで来て、「ルールに従い、さぁ帰ろか」と思ったが、「お!」。
山門の向かいに「たらいうどん」のお店があるではないか。

ここまで脚を回している間、道の隅に「たらいうどん」の看板を何度も見掛けた。
「たらいうどん」ののぼりを立てたお店も見掛けた。
ただ、時間帯のせいかコロナの影響か、開いている店は無かった。
まったく。
それがだ、法輪寺まで来て開いているお店をやっと見つけたのだ。

「丸亀製麺の釜揚げうどんとどう違うのか知らんけど、食ってみよか。阿波市の名物らしいし、ちょっと腹も減ってきたし」。
ハンドルに手を掛け、ロードを押してゆっくりと歩く。
小さな木造のお店の前には、饅頭だったかお餅が並んでいる。
「疲れてるからか、甘いもんも食いたいよなぁ」。
「風情もあるし」。
「ま、それよりもまずはたらいうどんや。うどん食った後、まだ腹に余裕があったら甘いもん食ったらええわ」。

完璧にたらいうどんの舌になった。
が、お店のどこにロードを立て掛けようかとキョロキョロしていると、Nさんからメールが入った。
「15時には釣りを終えます」と。
「まぁ、ゆっくりとたらいうどん食っても、まだまだ時間に余裕があるわ」。
スマートフォンをバックポケットに押し込もうとした時、ふと思い出した。
「『帰りに徳島ラーメン食べに行きましょう』『三八で食べましょう』。そんな会話が交わしたよな」。
「あぁ、参ったなぁ」。
俺の中には、「1日の食事で麺類は多くても1回」というルールがあるのだ。
うどんを食って、ラーメンも食って…は認められない。

俺はサドルに跨がった。
さよなら、法輪寺。
さよなら、たらいうどん。

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