(393)ロードお遍路の予行演習~老いを感じる俺~

12号線(の歩道)を走り、東へ進む。
鳴門に戻らなくてはならない。
山、田んぼ、畑の3点セットが続く道。
「あぁ、空気がうまい(気がする)」。

ロードバイクに乗っていて、心が満たされる経験を何度も繰り返した。
普段の生活において、あまり身近ではない自然を存分に感じられるのも、ロードに乗ることの魅力、醍醐味のひとつだと思う。
が、延々と景色が変わらないので、飽きてきたと言うか、進んだ気がまったくしないと言うか。
昔話でよくあるでしょ?
田舎道や山道を歩いていて、狸に化かされたせいで同じ道を何度も行き来するパターン。
あれは、単純に景色が変わらないからそう感じられたのかも知れないね。
知らんけど。

狭い上にそこそこの交通量がある車道を走るのは怖い。
「しゃあないな」と歩道をちんたらと走ったわけだが、当然スピードも出ない、出せないわけで(歩行者はほぼいないが)。
多分、この辺りに狸はいないと思うが、「ほんまに進んでるんか?」、「鳴門に近付いてるんか?」。
不安を感じサイコンを確認すると、遅いなりに少しは走行距離を稼いでいるようだった。
ちなみに、時速20㎞未満。
「ロードに乗る必要無いやんけ」と独り言を言いながらクランクを回す。

信号待ち。
スマートフォンの時計を見る限り時間に余裕がある。
かなり。
同じ頃、俺を車に乗っけて鳴門まで連れてきてくてたSさんは、筏の上で鯛を釣ってる(実際に釣れたかどうかはわからないが)。
Nさんが釣りを終える時間までに、鳴門の待ち合わせ場所に着くよう、俺なりにスケジュールを組んだつもりだが、「時速20㎞未満やけど、それでも早く着きすぎるよな…」。

ちょうどローソンがあったので、トイレを借りようと入店。
用を足して、トイレを借りたお礼の意味を込めて何か買い物をしようと思ったが、特に欲しいものが思い浮かばない。
「う~ん」。
「う~ん、とりあえず水でええか」。
いろはすをレジに持って行き、精算。
小銭が取り出しにくいサイクリング用の小さな財布に指をつっこみながら、「あ、あかんわ。俺、あかんわ」。
ふと思い出したのだ。
去年だったか、ネットの記事を読んだ。
「コンビニ店員から見たむかつく客ランキング」の上位に、「トイレを借りた後、ちょっとした買い物をする客」があった。
「あぁ、俺、むかつかれてるんかなぁ」と思いながら、「袋は結構です」。
シールの貼られたいろはすを手に取り、店を出る。
「ありがとうございました」と、女性店員の明るい声を背中に浴びて。

時間に余裕がありすぎる。
ローソンの前でのんびりいろはすを飲んでいると、目の前に止まった軽自動車から女の子が4人出てきた。
景色の一部としてぼんやりと見ていると、「俺も歳をとったなぁ」と思う。
男子校に通っていた10代後半の俺なら、「誰が一番かわいいか」と勝手に脳内で品評会を催していたのに、今はそんな余裕が無い。
「右の女は間違いなくエロい」。
「顔には出さないが、体が男を欲している。間違いなく」。
「あ、今、目が合った気がする」。
「これは俺を誘っている可能性がある」。
「十中八九間違いない」。
根拠など一切無いが妄想を膨らませ、勝手に納得していた10代後半の俺。
たかが妄想でも、今の俺には無理だ。
仕事のこととか親のこととか不甲斐ない自分のこととか、いろいろと考えることがある。

ちびちびといろはすを飲み、残った分はボトルに流してサドルに跨がった。
変わらない景色の中をちんたらと走っていると、歩道の脇に小さな広場とベンチ。
ちょっとした休憩所だ。
「こんなもん作るんやったら、道を広くせえよ」と思いながらもベンチに座り休憩。
時間は十分にあるのだ。
幸い、この日は天気もよく寒くもない。
そのままベンチに寝転がりたい気分になったが、アブが飛んできた。
俺は虫が苦手だ。
またサドルに跨がり、クランクを回す。

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