(394)ロードお遍路の予行演習~鳴門~

相変わらず山はすぐそこに見えるが、道路を包む景色が少し賑やかになってきた。
田畑、田畑、田畑、そしてお店。
田畑、田畑、お店。
市街地に近付いたのか、スーパーやドラッグストア、ラーメン屋に唐揚げ屋をしばしば目にする。
「テイクアウトで唐揚げ弁当でも買おか」と少し悩んだが、「鳴門に戻ってから徳島ラーメン食わなあかんのや」。
自制心が働いた。

ぼんやりとクランクを回し続け、「時間には余裕があるから適当に休憩しよか」と、知らない橋の真ん中で脚を止めた。
ぼんやりと川を見る。
俺の実家は、大阪市内でも中心部に近く、自然を身近に感じられる環境ではなかった。
家の周辺にいくつかの工場。
家の前には緑色に濁った川が流れていて、多分、ボラぐらいしか泳いでいなかった気がする。
日常的にそんな汚れた川を目にしていると、郊外に出て川を見るたびに「綺麗やなぁ」と感じたものだが、「なんかこの川も緑色やな」。
「自然豊かなこの環境で、何故、川の色が緑なのか?」。
「最近、大雨が降って川が濁ってるとか?」。
「いや、それはない。鳴門に来る数日前から天気予報をチェックしてたけど、雨は降ってないはず」。
頭の中で推理する。
が、「どうでもええわ。学者に聞け」。
休憩を終え、またサドルに跨がった。

鳴門の市街地、鳴門駅へと脚を回していると、「あ、この道、知ってるわ」。
「徳島市から吉野川を渡って鳴門に出る道や」。
「ってことは、ここを曲がってから真っ直ぐ行って…」。
自分が住んでいる町ではないのに、地図を見なくても進める。
他人に自慢できるようなことではないとわかっているが、自慢したい気分になった。

「久々ちゃうか?3階建て以上の建物見たのって」。
鳴門の駅前を通り過ぎ、Nさんとの待ち合わせ場所、渡船乗り場の駐車場を目指す。
細かい道は覚えていないが、方向とだいたいの位置はわかるので、この区間も地図を確認する必要が無い。
「『鳴門は俺の庭』と人前で言っても許されるポジションに昇り詰めたんちゃうか?」。
「もうそろそろ、『名誉鳴門市民』を名乗ってもええんちゃうか?市に何も貢献してへんけど」。
そんなことを考えていると、待ち合わせ場所に到着。
2時30分。

しばらくして、釣りを終えたNさんが筏から上がり、「今回も真鯛は1匹も釣れませんでした」と。
5,000円ほど費やした餌は、まさに海の藻屑と消えたようだ。
「では、気を取り直してラーメン食いに行きましょか」。
向かった先は、「支那そば 三八」。
Nさんには徳島ラーメンに詳しい知り合いがいて、三八はその人に勧めてもらったお店。
徳島ラーメンと言えば、大手「ラーメン東大」のすき焼き風?のラーメンをイメージする人が多いと思う。
が、三八のラーメンは見た目こってりしてそうで、優しさと旨味を感じる。
じっくり味わい、スープを飲みほした後、「今日はうまいもん食ったなぁ」だ。
この日の三八も美味しく味わえて満足できた。
ただ、コロナの影響でスタッフの数を減らしているのか、注文してから提供までいつもの倍ぐらいの時間を待たされた気がする。

「おそらく、あの車、覆面パトカーですよ」。
「へぇ、そういうのって何となくわかるもんなんですねぇ」。
Nさんと他愛もない話をしつつ高速を走り続け、西宮に着いた。
「今日はありがとうございました」。
「いえ、こちらこそありがとうございました」。
「また鳴門行きましょうね」。
「はい、また宜しくお願いします」。

次の日、俺は知り合いのFさんが経営するお店に飯を食い行った。
Fさんは、お遍路経験者(徒歩)で為になる話をしてくれる人。
「ロードバイクでね、1番札所の霊山寺から、極楽寺、金泉寺、安楽寺、十楽寺、熊谷寺、法輪寺。行きましたよ。中には入ってませんけど」。
「ほぅ、けっこう回りましたねぇ。長い階段のお寺、行きました?」。
「そこは10番札所ですね。その手前までは行ったんですが」。
喋りながら、「楽しい!」と思う。
「お遍路の話をしていると、時間を忘れるようだ」。
と、メールの着信に気付く。
「Nさんからや。何やろ?」。

メールに目をやり、読み進める。
「鳴門の渡船の船頭さんから連絡があり、コロナの影響でしばらく営業しないそうです」。
「ふ~ん、ほんでほんで」。
「なので、しばらく釣りができず、鳴門に行くこともありません。あしからず」。
「え!?」。
お遍路の予行演習とは何だったのか?
俺は鳴門に縁があるのかないのか…?

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