(399)買ったばかりのマスクをして、御前浜橋へ釣りの見学に-3

釣り場に向かう。
橋の下の岩場。見た瞬間、「勘弁してくれよ」。
傾斜がついた岩場で、昨夜の雨で少し湿っている。
Nさん(50代後半 男性)が釣り道具を置いて場所取りしている地点まで、たった10mほどだが、俺はSPD-SLシューズを履いているのだ。
「無理じゃ、アホ!」と叫びたくなった。

Nさんはひょいひょいと岩を踏み、飛びながら進んでいるが、俺には無理だ。
滑り落ちる自分の姿しか想像できない。
「仕方が無い」。
SPD-SLシューズを脱いで、ソックスを履いただけの状態で岩場を進んだ。
「SALE品のソックスやけど、それでも破れるん嫌やなぁ」と足の裏に気を使いながら。

餌箱を開け、「この小さい海老、琵琶湖産なんですよ」とNさん。
俺には、海老というより虫にしか見えなかった。
3㎝ぐらいの海老を小さな網ですくい、これまた小さなカップに入れて手で蓋をした後、数回上下に振って海老を水面に投げる。
「撒き餌ですよね?振るのはどういう意図があるんですか?」。
「振ることによって、海老は少しの間、気絶するんですよ。水の中で動かれると困るんでね」。
「なるほど」。
Nさんは釣り針にも海老を付けて、竿を水面に向かって投げた。

「ツーアウト!」と子供の声が響く。
近くで子供たちが野球をしているようだ。
斜め上の橋を見上げると、ジョギング中の女性がふたり。
コロナのせいで自粛ムードの今日この頃だが、みんな退屈で体を動かしたいのだろう。
俺はちょっとした活気を感じながら、浮きを眺めた。
30分経過。
我々の周辺だけ、し~んとしているようだ。

「あのね、Nさん。念のために確認したいんですけど、ここってフナムシいます?」。
「いますよ。krmさんが座ってる岩の側面にいっぱいいますよ」。
俺は泣きそうになった。
ロードバイクでいろんな場所を走り、自然豊かな景色に癒やされ、「自然って最高」と感じるわけだが、虫は本当に嫌い。
虫が飛んでくると、「自然って最低」と感じる。
しかも、フナムシって。
オオクワガタとかなら「捕まえて売ろう」という気にもなるが、フナムシって。
ほぼゴキブリやんけ。

それまで岩に手をつき、尻をついてゆったりと釣りを見学していたが、「いつフナムシが出てくるかわからんわ」と思うと、俺は立ったりしゃがんだりを繰り返す。
とりあえず体を動かしていると、フナムシは寄ってこないだろうという判断。
俺の中では、臨戦態勢なのだ。
おそらく、その時に普段使わない筋肉を使ったのだろう。
2、3日経っても筋肉痛の俺。

相変わらずNさんは撒き餌を投げ、竿を振っている。
とても単調な動きに見えたが、潮の満ち引きや流れに合わせて微妙に変えているようだ。
すると、「あ!」。
Nさんが声を発した。
「お、ついに釣れたか!?」。
スーパーリーチがかかった感覚。
だが、「あぁ、逃げられましたねぇ」。
Nさんが呟いた。
その後も、一応は餌に食い付いたが逃げられるを2回繰り返す。
「あのね、そろそろ本気出してくれたせんかね?」。
嫌味を言っておいた。

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