(406)阪神しまなみ海道ポタリング~俺の立ち位置~

「1、2、1、2」。
「1、2、1、2。そっれにしても熱いわぁ…」。
ダンシングで西宮浜から芦屋浜への橋を駆け上がる。
まぁ、大した傾斜でもないが、天気が良すぎて暑い。
その上、体を動かしているせいで熱い。
さらにだ。
半袖ジャージの下に冬物のアンダーウェアを着ていた俺。
汗が噴き出してくる。
「ちょっと、何でこんな格好で走ってるん?」と我ながら不思議な気分になる。
日常的にロードバイクで走っていると、季節の変わり目の服装について悩むこともかるが、この時、25度。
「お前、アホやろ?冬物のアンダーウェアって選択肢は絶対に無いやろ」と俺は俺に思う。

橋を渡り、歩道をちんたら走って次の橋、次のスロープに向かう。
「熱い…」。
ボトルケージからボトルを取り出し、何かで読んだ「プロはこういう飲み方をする」を実践し、喉に水を流し込んだが、「もうちょい飲もう」。
すぐにボトルは空になった。
水が無いと不安だ。
「そこら辺に自販機があったら、水を買お」と思いつつ財布の中を確認すると、40円しか入っていない。
普段使っている財布の小銭を、サイクリング用に移し変えるのを忘れていたようだ。
「40円で買えるドリンク、何かあるかな?」。
「駄菓子屋行ったらありそうやな」。
「まぁ、行けへんけど」。

芦屋浜のスロープを登り、次は深江浜。
やっと神戸。
ゴールだ。
が、「おちょくってんのか!?ボケ!!」。
怒りが込み上げてきた。
芦屋浜~深江浜間の橋は、今までとは別物。
最後の難関だ。
傾斜も距離の長さも嫌がらせとしか思えない。
俺は登りが嫌いだ。
坂を登るのが嫌いだ。
が、「坂を見る」のも嫌いになった。
見ただけで拒否反応を起こす。
「はぁ…」。
「この橋、構造がおかしないか?何とかならんのか?」。
愚痴を口ずさみながら「1、2、1、2…」。

「頂上までたどり着いたな」と気を緩め、ぼけっと景色に目をやり、それなりの達成感に浸ったわけだが、「あかんわ!」。
宅急便の配達が来るまでに家に帰らなくてはならない。
スマートフォンの時計を確認すると、まだ1時間の猶予がある。
もっと時間に余裕があれば、普段訪れない神戸か芦屋のうまい店で何かテイクアウトしたいと考えていたが、真っ直ぐ帰った方が良い。
宅急便の人にも迷惑を掛けたくないし、まぁ、そもそも俺は手持ちが40円。
うまい店に寄りたくても寄れる身分ではないのだ。
ロードに乗っていて、金銭面でのひもじさを感じるなど想像もしていなかった。
阪神しまなみ海道制覇と同時に、自分の立ち位置をつきつけられた俺は、家に向かってまたクランクを回す。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする