(412)ロードで鳴門を登る~薬王寺に行くはずが~

夜中の0時に起きて、風呂に入ってロードバイクのフレームを磨き、2時半に家を出た。
待ち合わせ場所へとぼとぼ歩く俺と、カラカラ鳴るロード。
薄暗い中、唯一存在感を発揮している100円自販機の前でNさん(50代後半 男性)を待つ。
5分ほどして、神戸ナンバーの白くて大きな車が止まった。
「お待たせしました」。
俺はハンドルからサイコンとライトを取ってバックパックに放り込み、ロードをひっくり返して前輪を外す。
釣り道具が置かれたトランクにフレームを積んでいると、Nさんは前輪を助手席の後ろの隙間に押し込んでくれた。

収納を終え、一息ついて「おはようございます」とNさん。
車は徳島県の鳴門市に向かう。
「おはようございます」と俺も返したが、眠い。
眠すぎる。
このブログで何度も愚痴った自覚はある。
しかし、再度愚痴りたい。
「釣り師と行動を共にするとロクなことがない」。
とにかく朝が早い。
まぁ、それは今まで経験上で承知しているのだが、今回はイレギュラーなこともあった。
なるべく早く寝るように心掛け、夕方、布団の上に横たわったところ、母親の電話によって叩き起こされる。
「あんたの銀行口座、大丈夫?お母さんのところに『口座が不正利用されたため、一時停止しています』ってメールが入ってんけど」。
似たようなメールは、去年、俺にも入った。
ネットで調べると、ただの詐欺。
「大丈夫やで。そもそも、そのメール自体、嘘やから」と何度も語り、心配性の母親を納得させるのに1時間を要した。
しょうもない詐欺師のせいで睡眠を妨害され、やりきれない気持ちになったよ。
本当に。

眠たくて眠たくて意識が飛びそうになったが、「運転してるNさんも眠たいはずや」。
そう思い、眠気覚ましになるかと適当に話を振る。
「ねぇ、Nさん、『明石のりラーメン』って知ってます?」。
「いえ、知りませんねぇ」。
「友達から聞いたんですけどね、インスタントの袋麺でね、めちゃめちゃ評判いいらしいんですよ」。
「ほぉ」。
「でね、『近々、鳴門に行くわぁ』言うたら、『買って来てくれ』言われましてね」。
「はい」。
「でもね、買おうにも鳴門に明石の土産って売ってないでしょ?県が違うのに」。
「それなら、もしかしたらですけど、淡路島のサービスエリアにあるかも知れませんね」。
「あぁ、大きいサービスエリアありますね。淡路島。あそこですかぁ」。
「寄りましょうか?」。
「…」。
話しているうちに、また睡魔に襲われた。

意識が戻り、辺りを見回すと鳴門の海。
運転席にNさんはいない。
「あぁ、もう釣りに出たか」。
渡船乗り場の駐車場に止められた車の中で、俺は朝を迎えた。
「とりあえずトイレ行こ」と近所のコンビニに向かい、ついでにちょっとした買い物をして車に戻る。
「なんや。今日は出発遅いんちゃうん?」。
声のする方に目をやると、船頭のおっちゃん。
「寝すぎたんちゃうか?」。
「はぁ、まぁ」と答えながらスマートフォンで時間を確認。
「え、9時前やん…。やってもうた…」。
後悔。
「夜明けは霧がすごくてなぁ、目の前、真っ白やったわ」。
おっちゃんは人の良さそうな顔でマイペースに何やら話しているが、俺はそれどころじゃない。
頭を抱えてスケジュールを練り直す。

本来のスケジュールでは、朝の5時前に鳴門に着き、15時までNさんは真鯛釣り。
その間、俺は自由行動。
「10時間もあるし、またお遍路の下見で薬王寺に行こう」。
当初はそう考えていた。
以前、鳴門から高知に向けて走り、薬王寺の前を通った際、「立派な大寺院やなぁ。時間があれば境内をゆっくり見て回りたいなぁ」。
で、「今回はええ機会やな。薬王寺まで片道60㎞ちょい。往復しても10時間以内に帰って来れるわ」。
余裕をかましていたはずが、車の中で寝たせいで4時間もロス。
「参った。なるべく近場、鳴門市内でどっかあれへんかな…」。

「しゃあない。鳴門スカイライン、久々に走ろうか」。
鳴門スカイラインとは、鳴門市北側、近くに海が見える山岳コース。
距離は多分10㎞程度。
もう5年は経つだろうか。
初めて鳴門に来た際、一度走ったが、「苦しい」「死にたい」と感じた記憶が残っている。
「あの頃に比べたら体重も落ちてるし、少しは余裕を持って走破できるんちゃうか?」。
自分にそう思い込ませながら、サドルに跨がる俺。

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