(424)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~汗と輪行と苦行~

前日よりバックパックに荷物を詰め込む。
ジャージとインナーパンツをそれぞれ2枚。
ソックスも2日分いる。
SPD-SLシューズ。
スマートフォンの充電器。
モバイルバッテリー。
ポケットWi-Fi。
鼻炎の薬にアンメルツ。
耳かき。
バイカーズパンツは履いて行こう。

バチバチ。
バチバチ。
眠っていても、降り続ける雨の音がベランダから聞こえ、明日のことが気掛かり。
俺はSさん(このブログを通して知り合った人 40代 男性)と、JR尾道駅前で待ち合わせをしているのだ。

目覚めると小雨になっていた。
傘を差して、普段通りに出勤。
適当に仕事をこなした後、昼過ぎに退社。
早く帰ってロードバイクの整備をしなくてはならない。
本来ならば前日にやっておくべきことだが、後回しにした。
チェーンにクリーナーを吹き付けながら、「子供の頃からやな。面倒くさいことを後回しにすんの」と、自分の愚かさにため息が出る。

それなりに整備を終え、バックパックを担いで家を出ようとしたが、ひとつ忘れていた。
「ロードを輪行バッグに収納しなければ」。
しかし、部屋が散らかっている。
輪行バックを広げられるスペースが無い。
仕方がないので、マンションの駐輪場で収納作業。
ささっと処理して「かなり手慣れてるね!」と自分で自分を褒める俺。

ひとりで照れながらバックパックと輪行バッグを担いで最寄り駅へ。
のはずが、途中で気付いた。
「新幹線のチケット、忘れたわ…」。
前日、普段使っている財布の中身をサイクリング用の財布に移したつもりだったが、うっかりしていた。
小走りで家に戻り、そしてまた駅へ向かう。
蒸し暑い中、重い荷物を持って無駄に歩いたせいか、汗が止まらない。
Tシャツもマスクも湿ってしまい、俺は不快感の塊になった。

阪神電車の最寄り駅に着く。
輪行バックは幅を取り、他の乗客に迷惑を掛ける懸念があるため、電車が来るまでホームの端で待機。
汗を拭きながらポカリスエットをガブガブ飲んでいると三宮行きの電車が入線した。
先頭車両に乗り込み、「耐えた!」。
平日の昼間だからか車内はスカスカで、理想通り運転台の後ろに輪行バッグが置くことができた。
「とりあえず、三宮には予定通り行けるわ」と一息つく。
が、また次の難関が待っていた。

阪神の神戸三宮駅からJR新神戸へ行くには、地下鉄に乗り換えなくてはならない。
正直、俺は神戸の地下鉄を利用した経験がほぼ無い。
また、地下鉄の三宮駅の場所をいまいち把握していないので、スムーズに乗り換えができるか不安。
「新幹線に乗るなら、いつも通り新大阪で乗る予定を立てればよかった…」。
後悔しながら地下街を歩く。
「重い…」。
「肩が痛い…」。
「帰りたい」。
ネガティブな感情に支配されながらも、なんとか地下鉄の三宮駅に着いた。
「徒歩5分の道のりを…ここまで苦痛…に感じたのは初めてやわ…」。

券売機の前で立ち止まり、あらかじめポケットに用意しておいた210円を投入。
切符を取り改札に進んだが、輪行バッグが邪魔すぎて改札をくぐるのも一苦労だ。
ホームに降りると、タイミング良く電車が到着。
しかし、俺は先頭車両か最後尾車両に乗らなくてはならない。
「くそ。いちいち邪魔やな」と輪行バッグを恨みながら走る。
結果、なんとか先頭車両に乗り込めたが、かなりの体力を消耗した。
「明日、ほんまにしまなみ海道走れるんか?」。
自分が心配になってくる。

地下鉄の新神戸駅へはすぐに着いた。
改札を出て、次はJRの新神戸駅に向かう。
また重たい荷物を担いで地下街をとぼとぼ歩いて行くと、階段…。
「1、2、3、4、5、6、7、8」と段数を数えたが、途中で諦めた。
「少なく見積もっても35段はあるな…」。
本当なら、階段の脇にあるエスカレーターに乗りたい。
乗りたい。
乗りたい。
乗りたい。
エスカレーターに乗りたい。
しかし、輪行バッグを担いだ俺が乗ると幅を取り、後ろから上ってくる人の邪魔になる。
「うん。なるべく人に迷惑掛けたないな」。
階段を選択。
うつむいて、耐え難きを耐えながら1段1段上がる。
「重い…」。
「汗が止まらん…」。
「でも、頑張った。もう、そろそろゴールが見えてきたかな」。
目線を上げると、「嘘やん!」。
目の錯覚かと思った。
上がりきった先に、また30段以上の階段があるではないか。
「許して…」。

なんとかJR新神戸駅に辿り着いたが、駅構内に入っただけだ。
まだ難関が待っている。
まずは改札。
もちろん、2階。
「また階段か…」。
ふらふらになりながら上がる。

改札を通り、次はホーム。
ホームに上がるには…もちろん階段。
「もう、ほんまに勘弁してくれ!」。
「尾道に着く前に死んでまうわ!」。
輪行バッグを肩から下ろし、汗を拭きながら考える。
「今の状態やと、階段の途中でくたばってまう」。
「とりあえず休憩しよう。まだ時間に余裕がある」。
「あと、水分補給も必要やな」。
近くに自販機がないか見回すと、「うお!」。
エレベーターが目に入った。
「その手があったか、その手が」。

エレベーターを凝視すると、たまたまなのか誰も利用していないようだ。
周りに乳母車を押したお母さんがいれば躊躇するが、そういった人も見当たらない。
と言うわけで「GO」。

ホームの壁にもたれる。
そして、既にひと仕事終えた心境でのぞみ31号を待った。
輪行バッグの重さと幅のおかげで、体力的にも精神的にも随分と疲労した。
冷静になって考えてみると、俺が住む兵庫県西宮市から、Sさんと待ち合わせている広島県尾道市まで、距離的には全然進んでいない。
それでも、ひと仕事終えた心境になった。

つづく

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