(426)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~尾道を歩く~

尾道の駅前で今回の同行者であるSさん(40代 男性 このブログを通して知り合った人)がいるはず。
待ち合わせているのだから。
改札を出てそのまま進むと、掲示されている案内図があり、そこには見覚えのある黒のロードバイクが立て掛けられている。
脇にはカスクを被るスラッとした男性。
「Sさんや」。

「お疲れ様です」。
「お疲れ様です」。
「伊勢から尾道まで、大変やったでしょ?」。
「近鉄で鶴橋に出て、大阪駅から在来線で福山まで出て、そこからは走りました」。
「まぁ、とりあえず予約したビジネスホテルに向かいましょうか」。
ふたりともアルファーワンというホテルを予約していたので、駅の西側に進む。
道中、伊勢から尾道まで移動を続けたSさんの苦労話を聞いたが、俺が話を振ったくせにあまり頭に入ってこなかった。
俺は俺で疲れていたので。

カラカラ、カラカラとSさんはロードを押して、話しながら歩く。
俺は輪行バッグを背負って拷問継続。
ホテルに着き、「30分後に飲みに行きましょか。待ち合わせはホテルの玄関で」と、ちょっとの間、別行動。
玄関の前でSさんはロードを輪行バッグに収納し始め、俺は輪行バッグを担いだままフロントへ。
チェックインの際、受付の姉ちゃんに「ホテルのポイントカードがどうたらで、カードの色は何色にしますか?」などと聞かれ、「とりあえず黄色で」と答えた。
俺は一刻も早く輪行バッグの重さから解放されたかったし、横になりたかったし風呂に入りたかったし。

予約した5階の部屋に入り、ほっと一息。
「遅刻せんと無事に尾道まで来れた」。
ひと仕事終えた気分だ。
それはそれとして、一刻も早く風呂に入りたい。
輪行バッグを担いで歩きまくったせいで、かなり汗をかいた。
さっぱりと汗を流して、尾道を飲み歩きラーメンを食うのだ。

風呂に入ってまったりしていると、「あ、もう約束の時間やわ」。
大慌てで頭と体を拭き、財布をポケットに入れて部屋を飛び出す。
エレベーターを待っていると、7階。
「おいおい、俺が待つ5階までとっとと来いよ」と念じ、しばらくしてエレベーターに乗り込むと、Sさんが乗っていてちょっとびっくりした。

「どっか行きたい店、ありますか?」と俺。
「どこでもいいですよ」とSさん。
「尾道ラーメンもお好み焼きも、海の幸が美味しい店もあると思いますよ」。
話し合った結果、まずは適当な居酒屋で飲み、〆はラーメン屋で…となった。
「じゃあ、とりあえず商店街の方に向かいましょうか」。
俺は大学の卒業旅行以来、10回近く尾道に来ている。
その尾道通ぶりをアピールしたく、Sさんを商店街へ案内しようとしたが、道を間違えた。

「まぁ、何か海岸沿いの道に出ましたけど、商店街、すぐそこですから」。
軌道修正。
細い路地を歩くと、両サイドには地元の人しか寄り付かない雰囲気のスナックや、小さな商店に古びた民家。
小綺麗になった駅前とは違う、俺の大好きな尾道の風景があった。

「ここですわ」。
商店街に足を踏み入れ、「さぁ、どこの店で飲むか選びたい放題や!」。
意気揚々と居酒屋を探したが、閉まっている店が多すぎる。
「まだ17時過ぎやから開いてないんですかね?」とSさんに話を振りながらも、「そもそも営業してんのか?」とも思う。
また、なかなかのゴーストタウン感があり、「この風景に痺れるぜ」と唸りそうになったが、居酒屋が無いと歩いている意味が無い。
と言うわけで、駅前の方へ戻ることに。

尾道まで輪行バッグを担ぎ、汗だくになってきた。
早くビールが飲みたい。
Sさんも同じ気持ちだったと思う。
と、アーケードにぶら下がる居酒屋の看板が見えた。
「確か、食べログで高く評価されてた店やわ」と思い、「ここにしましょ」。

入店すると、「ラーメンの鬼」と呼ばれた佐野実氏…を優しくしたような顔立ちの店主に迎えられる。
「キレられへんように、念のため行儀よく飲み食いしよ…」。
お通しの枝豆をひとつ掴み、指で押し出して口に含む。
それを何度か繰り返していると、生ビールが来た。
「お疲れ様でした」。
「乾杯」。
ビールを飲みながら、また尾道までの道のりについてゆっくり語り合う。
まぁ、俺はSさんの話を聞きつつも、ちょくちょくSportsnaviの野球速報に目をやりながら(この日、プロ野球の開幕戦があり、阪神が気になって気になって)。

飲み食いしている間、ふと気付いた。
「え、どういうこと?俺、枝豆を箸で食ってる人を初めて見た…」。
上品すぎて、たじろぐ。
Sさんは気さくな人柄だが、実は上流階級の人なのか、大企業の偉いさんなのか。
阪神よりも気になるよ。

砂ずりの炒めものと天ぷら盛り合わせを注文。
酒も進み、気持ちよくなってきた。
「阪神、このまま勝ってくれたらええなぁ」とスマートファンに目をやると、不在着信。
仕事関係の電話だ。
正直なところ、今回のしまなみ海道への旅は、仕事をやや疎かにし、ごり押しでスケジュールをねじ込んだ。
「なるべくなら電話なんてかかってきませんように」と願っていたが、先方には先方の都合がある。
「Sさん、ちょっと電話せなあかんので、すみません」。
俺は店の外に出る。
「一気に現実に戻された」。
そんな気分になった。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする