(428)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~初めての向島~

朝6時に起きる。
Sさんとの待ち合わせは9時なので、時間には余裕がある。
正直、もう少しゆっくり寝ておきたいところだが、そういうわけにもいかない。
年のせいか、立ち上がりが悪いのだ。
動き出す前にぼんやりする時間を確保しなければ。

テレビをつけて缶コーヒーを少し飲み、風呂に入ってすっきりしてから、またテレビの前で過ごす。
あまり考えたくなかったが、昨夜かかってきた母親からの電話がどうしても気になる。
「ほんまに今日家出するんやろか…?」。
「冷静になって踏みとどまってくれへんやろか…」。

時計に目をやると、8時45分。
「あ、もう約束の時間になるわ」。
急いでジャージに着替えた後、荷物をバックパックに詰め込み、輪行バッグを背負ってフロントに向かう。
今度いつ使うかわからないホテルのポイントカードを貰ってチェックアウトし、玄関を出るとSさんが立っていた。
「おはようございます」。
「おはようございます」。
ふとSさんのロードバイクを見ると、前輪も後輪も付け終わっている。
「もう走れる状態ですね。自分も今すぐやるんで、ちょっと待ってて下さいね」。

ふたりで軽く走り駅前に出る。
「すぐそこに渡船乗り場があるんで、船で向島に渡ります。待ってたらすぐに来るみたいです」。
Sさんの指示に従い、近くの渡船乗り場に進む。
今年の春に、Sさんと松阪~伊勢~鳥羽~志摩を走ったが、下調べはすべてお任せした。
今回のしまなみ海道~とびしま海道も、Sさんに甘えさせてもらう。

乗り場に着くと、渡船は出たばかりで10分ほど待つことに。
「船の運賃、なんぼするんですかね?」とSさんに聞く。
「100円ぐらいやったと思いますよ」。
乗り口の脇に立てられたしまなみ海道の案内図を見ながらスケジュールについてざっくりと話していると、ちらほらロード乗りが集まってきた。
我々と同様、県境移動制限解除のタイミングで尾道に来た人たちなのか。

船が到着。
ロードを押し、歩いて乗り込む。
俺とSさんは一番乗りだったので、スペシャルリングサイドだ。
自然豊かな緑の中に造船所のクレーン。
今までの尾道旅行でも「味わいがあるな」と思ったが、間近で見れて嬉しいのなんの。
この時点で(しまなみ海道を走る前やけど)、「来てよかったなぁ」だ。
「お、細い川に入って行くぞ」。
尾道駅や海岸通りから眺めた景色の中を船は進む。
「ついにこの日が来たか…」。
呆然と立ち尽くしていると、「110円です」。
職員のおっちゃんに声を掛けられ、我に返った。

短い船旅。
向島に着いて渡船乗り場を出ると、会社と小さな商店が目に入った。
「Stravaの記録、頼めますか?」とSさんにお願いし、しまなみ海道スタート…だが、いきなり緑豊かな中を走るわけではなく、道の脇にはラーメン屋、焼肉屋、スーパー。
「普通の郊外やん」と、少し拍子抜けした。

赤信号に2、3回捕まった後、しまなみ海道のルートを示す路面の青いラインに従って走る。
と、海が見えてきた。
「来たぜ。しまなみ海道」。
そんな実感が湧く。

右前方に赤い橋が見えた。
しまなみ海道は島と島を繋ぐ橋を渡って進むので、「あれが一発目の橋か」と思いSさんに聞いてみる。
Sさんは以前しまなみ海道を走った経験があるそうなので、簡単に答えてくれると一方的に決め付けて。
ところが、どうも要領を得ない。
「ま、それはそうやわな。いちいち覚えてへんわな」。
後になってそう思う。

横風を少し感じながらクランク回し、赤い橋(帰ってから調べると、向島大橋という)を通り過ぎる。
アスファルトの灰色、緑と青。
景色は変わらないが、交通量も信号も少なく走りやすい。
数人のロード乗りに追い抜かれ、道端で釣りをする人を横切り、ひとつ目の橋、正解の橋までもうすぐだ。

つづく

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