(430)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~悩みながら脚を回す~

因島大橋を渡り終え、因島北側の海岸沿いを走る。
サイコンに目をやると、ケイデンスは70前後で時速は30㎞ほど。
Sさんから「しまなみ海道は70㎞ぐらいです」と聞いていたので、「このペースやと2時間ちょいで終わるんか。それはそれで寂しいな」。
この時点ではそう思ったが、先に言っておくと、結局90㎞ほど走ることになり5時間15分かかった。

海岸沿いから少し内陸部に入り、ちょこちょこと民家や商店が目に入る。
地元の高校生だろうか。
10mほど先をママチャリに乗る男の子が4、5人でワイワイ騒ぎながら走っていた。
「どうやって抜こうか」と考えていると、彼らは郵便局の前で停止。
そして何やら盛り上がっている。
「この島の若者にとって、郵便局が盛り場なんかな?」。
どうでもいいことなのに、気になって気になって仕方が無い。
「いやいや、さすがにそこまで田舎ちゃうやろ」などと考えながら脚を回していると、10分ほどでauショップやコンビニが見えた。
「うん、考えすぎやったな」。

コンビニの駐車場に入る。
ロードバイクをフェンスに立て掛け、「ちょっとトイレ行ってきます」。
Sさんにそう伝えて用を足した後、エナジーゼリーをひとつ購入して店を出た。
まぁ、どういう効果があるのかわからないが、何かしらプラスになるだろう。
そんなことを考えつつ、貧乏性の俺はちびちびとゼリーを吸っていると、「次はあれですね」とSさん。
次の橋、「生口橋」が見える。
Googleマップを起動し、「今はこの辺りですね」。
「それにしえも、この橋は何て読むんですかね?」となり、「お互いわかれへん」となった。
後で調べたところ、「いくちばし」が正解。

サドルに跨がり、生口橋に向かって走る。
相変わらず、信号が少なく景色も良い快適なサイクリングだが、いまいち楽しめない。
母親からいつ連絡があるか、俺は内心びくびくしながら脚を回していた。
引っ掛かる。
前日の夜にかかってきた、「お母さん、明日家出するわ」という電話。
単に酔っ払っていただけならいいが、そうではなかった場合、俺はどうすればいいのか。
父方の祖母は80を過ぎてボケてしまい、俺も子供ながらに苦労したが、「70前の母親もか?」。
そうは思いたくない。
「参ったなぁ」と思い溜め息をつきそうになりながらクランクを回していると、「左!行き過ぎです!」。
後ろからSさんの声が聞こえた。
「あ、生口橋へ登る道、さっきの角やったんか」。
足元を見ると、しまなみ海道のルートを示す青いラインは確かに無かった。

生口橋に限らず、しまなみ海道の橋は自転車用と原付用の道が用意され、途中まで共有し途中から別れ、また合流し。
普通に「ちょっとややこいな」と思ったが、前を走るSさんが俺を誘導してくれた。

「ここも立派な橋やなぁ」。
看取れてしまう。
が、我々はしまなみ海道を走り、とびしま海道も走る。
不思議なもので、途中から「立派な橋慣れ」してしまい、感動の度合いが低くなってくる。
まぁ、この時点では、まだ新鮮さを感じたけどね。

尾道から渡船で向島に渡り、海と島の景色を楽しみながら快適に走り、1時間半経過。
長袖ジャージで走ったが、まだ汗をかくこともなく体力的に余裕がある。
後からトラブルや拷問が待っていたが、この時は母親のことを考えながら、俺はひたすらクランクを回していた。

つづく

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