(432)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~しおまち商店街のコロッケ~

正面に灰色のアスファルトが延々と連なり、右手には海。
ずっーと同じ道を走っている感覚に陥りながら、次の多々羅大橋を目指してクランクを回す。
と、田舎の小さな町並み。
「なんか、潰れかけの商店街があるよなぁ」と思い、凝視しつつ信号待ちしていると「!」。
思い出した。

「ちょっと寄って行きましょう!」。
Sさんに声を掛ける。
前の記事にも書いたが、寄り道しながらしまなみ海道を楽しみたいSさんとは違い、俺はとっととゴールの今治に行きたい派だが、ここだけは行っておきたい。

古びた商店街の名前は、「しおまち商店街」という。
商店街というからには商店が立ち並んでいそうなものだが、実際はそうでもなく、人通りも少ない(県境移動解除の直後だからか、0に近い)。
退廃的な空気満々。
だが、行きたいのだ。
コロッケ屋へ。

しまなみ海道を走る数日前、ホテルの予約やら新幹線の予約やら何やらしつつも、「しまなみ海道 グルメ」で検索して情報収集をした。
アイスクリーム、ジュース、海鮮丼など色々と名物はあったが、俺にとって魅力的に感じたのが「コロッケ」。
コロッケって、同じ揚げ物でもトンカツやミンチカツに比べると質素だが、甘味のあるコロッケの素朴さと旨さが俺は好きだ。
で、しおまち商店街には、評判のコロッケ屋があると。

クリートを外し、ロードバイクを押しながら商店街を歩く。
コロッケ屋の正確な場所はわからないが、「まぁ、小さな商店街やろから、すぐわかるやろ」と気楽な気分で。
真っ直ぐ進むと、「ちょっと待って下さい」とSさん。
商店の前にロードを止め、どこかに立て掛けようとするが、「自分が持ちますよ」。
俺はSさんのロードのハンドルを軽く握った。
そして、店に目をやると「あ、ここは…」。

こじんまりしたパン屋に見えたが、違う違う。
ビッグネームだ。
ローストチキンの「玉木商店」。
メニューは、「手羽」と「足」と「丸焼き」というシンプルさ。
Sさんはお店の兄さんに「足で」と注文。
俺としては、サイクリング中にしっかりしたものを食べるのは控えている(空腹感があった方が体のキレがいいと考えているので)。
しかし、「おぉ…」。
Sさんが買ったローストチキンを見ながら、「こんなん旨いに決まってるやん」とよだれが出そうになったが、我慢だ我慢。

商店街を進むと、「コロッケ」ののぼり旗。
ドアが無く、さっと入店できる作りなのでロードを押して入ると、町の肉屋さんという感じ。
でも、コロッケを売ってる気配は無い(店員さんもいなかった)。
「どうしよ」と思い外に出ると、真横にコロッケ屋。
同じ経営者の方が、肉屋さんとコロッケ屋さんを分けて営業しているようだ。

コロッケ屋の前に移動し、「あの、コロッケひとつ下さい」。
そして、お店のおばあちゃんが「はい。天気のいい日に来れてよかったねぇ」。
少し話しながら、「メニューはどこに貼ってるんやろ?コロッケの値段がわからん」と思いきょろきょろしてしまったが、「とりあえず100円渡したら買えるやろ」と判断。
100円玉を手渡すと、お釣りの10円とコロッケを渡された。
「コロッケひとつで90円って、まぁまぁの値段やな」。
少し考え込んでしまったが、雰囲気込みだと受け止め、その場でかぶりつく。
サクッとした食感の後に芋の甘さを感じ、「ソース無しでもシンプルに旨いコロッケ、いいねぇ」。
俺は頷きながら口を動かした。

つづく

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