(433)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~平均時速に卒倒しそう~

「うん、旨かった」。
コロッケを30秒ほどで食べ終え、満たされた気分になった。
「てなわけで、多々羅大橋に向かいましょか?」。
そう言おうとしたら、「ゆっくり食べられるところに移動しましょ」とSさん。
なるほど。
Sさんはローストチキンを食べなくてはならないが、コロッケと違い道端で食べられるものではなない。
スマートフォンで地図を確認して周辺にベンチがありそうな場所を探し、「こっちの方に広いところがあるみたいです」。
Sさんに誘導され、軽くクランクを回す。
車も通れないような狭い道を進み、「えらい立派やなぁ」。
階段と山門を見ただけで萌えてくるお寺を目にしたがスルー。
「次回来た時に寄ったらええわ」と一人言を言い、工事中の道を横切って海沿いの広場に出た。

みなとオアシス瀬戸田。
小さな港のベンチに座って、Sさんはローストチキンを食べ始めた。
が、本当に旨そうで見てられない。
「うっわ…。Sさん、それ、見るからに絶対旨いですよね」。
話しながらもウズウズしてくる。
「で、ちょっとトイレに行ってきます」と伝え、その場を離れた。
「羨ましい…」。
自販機で水を買い、ベンチに戻るとSさんは食べ終えていた。
「美味しかったですよ。好みの味でした。甘いタレの味付けが」。
感想を聞くとますます辛くなってくる。
次回、しまなみ海道を走る時は、絶対にローストチキンを食いたい。

港の景色を見ながら写真を撮り、またベンチに戻る。
とにかくローストチキンのことは忘れるように心掛け、Sさんに話し掛けた。
「何㎞ぐらい走りましたかね?平均時速、どれぐらいっすかね?」。
「時速は12㎞ですね」。
俺はひっくり返りそうになった。
ふとりともロードバイクに乗っている。
「時速12㎞はないやろ…」。
素直にそう思ったが、Sさんが言うには、Stravaの記録は休憩時間も込みの「時速12㎞」らしい。
致し方ない。

しばらくぼんやりしながら「今頃、時速9㎞ぐらいに落ちてんかな?」と思っていると、「そろそろ行きましょう」とSさん。
サドルに跨がって軽くクランクを回し、また自販機の前に進んで水を買い、そして多々羅大橋に向けて走った。

15分ほどで見えてきた。
因島大橋、生口橋と同じように、橋の入口へは緩やかな傾斜のスロープを登って行く。
と、前を走るSさんが脚を止めた。
「どうしたんやろ?急に」と思ったら、「ここで写真撮って行きます」。
道の隅に目をやると、「国産レモン発祥の地」の碑と、レモンがディスプレイされたベンチがある。
「なるほど。ロードと一緒に写真を撮りたいと」。
ベンチの端にロードを立て掛けて写真を撮るSさんを、「この人、旅を楽しんでるよなぁ」と感心しながら見る俺。
「見習わなあかんな。せっかくの機会なんやから」。
「でもなぁ、こんなんしてる間にさらに時速が…」。
自然に頭がクラっとした。

つづく

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