(438)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~亀老山拷問ヒルクライム~

登りスタート。
「もうどうにでもなれ」とペダルを踏む。
踏む。
踏む。
そして、早速「もう勘弁して下さい…」。

樹木が生い茂る薄暗い中を進む。
と、「あ、これ以上軽いギアがあれへん!」。
背後からSさん(この不人気ブログを読んでくれている、日本で3人中の1人)の声が聞こえた。

とりあえず登れるところまで一気に登る…つもりでいたが、呼吸困難。
鼻炎のせいで鼻から息ができない。
道の脇に小さなスペースを見つけ、さっそく休憩に入る俺。
多分、スタートして50mぐらいの地点だと思う。
ひとりゼエゼエいっていると、目の前をSさんが横切った。

気持ちとしては、2時間ほどゆっくりと自然の空気を吸いたいが、そういうわけにもいかない。
えっちらおっちら脚を回し、また少しずつ登っていく。
が、また道の脇に小さなスペースが。
休憩。

また登り出し、「1、2、1、2」とダンシング。
少し先に急カーブが見え、一瞬だがSさんの後ろ姿が見えた。
多分、辺りで俺を待ってくれていたのだろう。
「今やったらまだ追い付けるかな?」と一瞬考える。
しかし、俺は「休憩」を選択した。

まだ脚には疲労を感じないが、呼吸困難で苦しい。
「確か、鼻炎の薬持ってきてるよな」。
「鼻にシュシュってするやつ」。
「バックパックのどっかに入れた記憶があるわ」。
「でも、探すんが面倒くさい」。
「とにかく動きたくない…」。

しばらくぐすぐずしてから、再スタート(再々々スタートか?)。
まったくスピードは出ないが、何とか一歩一歩展望台に近付く(と信じる)。
「そっれにしても、この遅さで転倒せえへんのは、俺ってバランス感覚に優れてるんかな?」。
変なところで自分の新しい能力に気付いた。

「どうせ速度は1桁やろな」と思いつつサイコンに目をやると、表示無し。
「そやそや、潰れたんやわ」。
ちょうど現実逃避したい心境だったので、サイコンが潰れたのは結果オーライかも知れない。

自然に「死にたい」という感情が湧き出る。
苦痛の連続で、脚も精神も粉々になりそうだ。
そんな時、ふと道の脇に目をやると「展望台まであと1㎞」や「あと500m」の立札。
俺はこの「あと何m」を信じないようにしている。
「あと少しだ」と思わされた結果、予想以上の苦しみを味わった経験が多いからだ。
「もう罠にはめられへんぞ」と心の中で呟き、俺はクランクを回した。

無心になることを心掛け、ただただ登り続ける。
と、Sさん発見。
俺も待ってくれている。
そして「展望台、すぐそこですよ」と声を掛けてもらったが、「ほんまかいな?そんなこと言って、まだ1㎞ぐらい登らないあかんのちゃうん?」と思った。
俺はひねくれている。

展望台の駐車場に着き、サイクルラックにサドルを引っ掛けた。
「お疲れ様でした」とSさん。
俺もゼエゼエいいながら、「お疲れ様でした…」。
体中が汗まみれで、ジャージもびしょびしょ。
「Sさん…、展望台に行くなら…お先にどうぞ…。ロードは…、自分が…見張っておきますので…」。
地面にへたりこんでSさんを待つ。

かなりの絶景が見られるそうだが、そんなことよりも今治まで走れるかが気掛かりだ。
「脚が痛くて走れません…」となった場合、最悪、輪行で移動すればよいが、「ここ、どう考えても電車走ってへんわな」という環境だ。
タクシーを呼んでも、トランクにロードバイクを積めるかどうかわからない。
バスにしてもそうだ。
そんなことを考えていると、Sさんが戻ってきた。

展望台への階段を上がる。
SPD-SLシューズを履いているので、あまり歩かせないでもらいたい。
有名な建築家が手掛けた展望台ということで、どこにでもある小さな広場とは違う。
が、「疲れ果てたよ…」。
ぐったりと景色に目をやる。
しかし、「綺麗」より「疲れた」が俺の中で勝った。
余裕で。
早くビールを飲みたい。
早く横になりたい。

つづく

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