(439)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~来島海峡大橋~

亀老山展望台でぐったりと景色を見た後、売店でアクエリアスを買い、すぐに飲み干した。
汗も引き、生き返った気分だ。
サイクルラックに戻り、「では、次に進みましょうか」。
一気に山道を下る。
行きの登りが拷問だっただけに、帰りは「ちょっと怖いわ」とひやひやする下りだった。
途中、クロスバイクを押して歩く、くたばりかけの女性とすれ違い、哀愁を感じつつ「気持ちはわかる」と思った。

しまなみ海道のゴールである今治へは、あと1つ橋を渡らなければならない。
来島海峡大橋だ。
「まぁ、亀老山で経験した拷問に比べたら、この先余裕やろ」と思いながらクランクを回したが、膝に痛みを感じる。
この時、平坦な道を走っていたので、誤魔化し誤魔化しペダルを踏んで進むと、途中から痛みが和らぎ本来のペダリングを取り戻した。
まぁ、しょぼいけどね。
本来のペダリング。

海が見えたので、「橋がすぐそこにあるんやな。もうすぐゴールや」。
そんな感慨に浸っていると、Sさんから「休憩しましょう」。
「はい」。
立ち止まり、辺りを見回したところ、どうやら道の駅のようだ。
Sさんはトイレに駆け込み、俺は釣りをしているおっさんをぼんやりと眺めた。
しばらくしてSさんが戻ってきたので出発。
もう、この辺りで「一応、授業には顔を出すけど、卒業式に出たら終わり」という感覚。

長いスロープを曲がりつつ徐々に登ると、「ちょっと、この橋はスケールが違うよな」。
途中にある小島を経由し、トータルでは4105mもあると(wikipediaを読んだ)。
高いところがあまり好きではない俺だが、しまなみ海道を走りいくつもの橋を渡ったせいか、「怖い」よりも景色に目をやる余裕を持てた。
が、あまり景色に目を取られてはいけない。
立ち止まって写真を取る人や、今治から来る自転車乗りと接触する懸念がある。
ゴール直前に事故は避けたい。

「しょーもない事故には気を付けなあかん」と自分に言い聞かせ、時速20㎞ほどでゆっくり進むと、少しずつ見えてきた。
対岸の景色。
今治だ。
「あぁ、やっとやわぁ」と一安心した。
が、来島海峡大橋を渡り終えても、予約したホテルのある今治駅前まで10㎞近く走らなくてはならない。
「そやそや」。
少しぬか喜びした気分になった。

スロープをぐるっと回り、そして下り、出口へ。
「ここから今治駅までのルートを相談したいな」とSさんに声を掛けようとしたところ、「ちょっと寄りたいところがあるんで」。
「はぁ」。
付いて行った先が、「サンライズ糸山」。
宿泊施設であり、レストランやレンタサイクルの貸し出しもしているそうで、しまなみ海道の今治側における拠点らしい。
Sさんは施設の写真を撮り、楽しそうにしている。
名所を回って旅に彩りを添えているのだろう。
Sさんらしい。
ただ、俺はいまいち楽しめない。
前日にかかってきた母親からの電話が、どうしても引っ掛かるのだ。
「明日、家出するから」と70前の母親に言われ、「何でやねん…?」。
俺は、不安を抱えながら、明日もとびしま海道を走らなくてはならないのか…。

つづく

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