(440)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~今治のSさんと俺~

信号、信号。
車、車。
夢が覚め現実に戻った感覚に陥りながらクランクを回す。
今治の市街地に向けて。

しまなみ海道ではほぼ一本道だったので、町中は複雑だと実感する。
「ここ真っ直ぐでいいんですよね?」。
「どこかで右に曲がらないといけないですよ」。
「それはどこですかね?」。
「どうやら、ファミリーマートの角のようです」。
Sさんと相談しながら進んだ。

途中、俺が前を走ったが、交通量が気になり歩道に逃げる。
「歩道でいいですよね?」とSさんに確認を取り、ちんたらちんたら今治駅を目指す。
それにしても、かなり不快。
あまり見掛けなかったが、一応歩行者に気を使い、段差の突き上げをくらい「日常に戻ったな…」。
 目印にしていたファミマが見えたので、その角を曲がる。
駅やそこそこ高い建物が目に入り、久々に見た都会的な風景だ。
「とりあえず、Sさんが予約したホテルに向かいましょか」と、またちんたら進み、「どうやらこの辺りらしい」というところにあまりスタイリッシュではないホテルを発見。
「Sさん、じゃあ、俺は俺でホテルに向かいますんで、飲みに行く時間とか待ち合わせは後でメールしますね。では」。

俺が予約したホテルは駅の真ん前。
1階にお洒落な飲食店があり、そこからガラス越しに外を眺めると、変に色黒で頭ボサボサの男がロードバイクの前輪と後輪を外す作業をしていたことだろう。
俺はロードを輪行バッグに収納し、ふらふらになりながらロビーに進んでチェックインを済ませた。

自分の部屋に入り、とりあえず素っ裸になって風呂に直行。
亀老山に登ったせいで汗まみれ。
すぐに体を洗いたかった。
風呂を出て、特に観たい番組もないがテレビをつける。
そして、スマートフォンで近隣の飲み屋を調べた。

以前、今治には城巡りで訪問したので、「焼鳥が名物」という情報が俺の中にインプットされている。
一般的な串に刺す焼鳥ではなく、調理したものをそのまま皿に出すスタイル。
「前は食われへんかったけど、今回は食べたいな」と焼鳥の名店を調べたところ、「黙って食え!」系の店主がやってる店が旨いらしい。
「そんなん、しんどいわ」と別の店を探したところ、Sさんが泊まるホテルの近くにも評判の店があった。

「そちらのホテルの近くに焼鳥の旨い店があるようなので、そこに行きましょう。1時間後、迎えに行きます」とSさんにメール。
しばらくして、「ちょっと焼鳥屋を覗いてみたところ、既に満席で、外に5人ほど並んでいます」と返事が入った。
「やっぱり人気店なんやなぁ」と感心しながらSさんのホテルに向かい、ふたりで焼鳥屋に行くと「まだ並んでますね…」。
ラーメン屋ならある程度回転が早いと思うが、焼鳥屋で待つとなると、どれだけ待たされるかわからない。
「諦めましょ。その辺に焼肉屋があるので、そこにしましょ」。
2、3分歩き焼肉屋に入店。
レジの近くにいた女性店員に「ふたりです」。そう伝えると、「すみません。今日はご予約のお客様しか…」。
失礼だが、予約しなければならないほどの店とは思っていなかったので、かなり意表を突かれた。

朝からロードバイクに乗って90㎞近く走った我々は、疲れているし、早くビールを飲みたい。
正直、「店なんかどこでもええわ」という気分になってきた。
そんな時、「あそこにも店がありますよ」とSさん。
「あぁ、あれはチェーン店ですね」。
店にこだわる気は無いが、今治まで来てチェーン店に入ることに抵抗を感じる。
しかし、店を探し歩くのも鬱陶しいので、「ここにしましょか」。

入店し、個室に案内された。
男性店員から飲み放題やタッチパネルの端末で注文する件について説明を受け、乾杯。
「やっとゆっくり飲めるわぁ…」。
ハイボールをごくごく喉に流し込む(生ビールは飲み放題メニューに無かったので)。
カニクリームコロッケを口に含み、「うまいわぁ」。
Sさんと翌日の予定について話しながら、飲み食いした。
が、途中からドリンクを注文してもなかなか持って来てくれない。
「まぁ、チェーン店の飲み放題なんて、こんなもんやろ」と自分を納得させようと心掛ける。
でも、イライライライラ。
「さすがに遅すぎますよね」とSさんに話を振ったタイミングで、「お待たせしました」。
店員がカルピスやレモンチューハイも持って来た。
が、「そんなもん頼んでへんわ!」と怒りそうになる(実際には怒ってはいないけどね)。
またイライライライラ。
「まぁ、『安かろう悪かろう』や。過剰な期待も常識も禁物」。
そう自分を納得させようとした。
しかし、タッチパネル端末で注文履歴を見た時には、さすがに「ぶちギレたろか!」となった。
俺の想定では、1人3,000円程度でトータル6,000円なのに、表示されたのは10,000円近い。
「ど…、どういうことや…?」。
内訳を確認すると、レモンチューハイやカルピスを筆頭に注文していないものがつらつら並び、ステーキまである。
「アホか!ステーキ食いたかったけど、高いからスルーしたんじゃ!それを何で請求されなあかんねん!」。

店員を呼び出すと、バイトなのか社員なのかはわからないが、そこそこしっかりしてそうな姉ちゃんが来た。
「姉ちゃん相手に怒ったら、こっちがみっともないな」と、冷静になって事情を説明。
注文したものが届くまで遅いのはなんとか我慢するが、意味不明な会計に関しては正してもらいたい。
「申し訳ございませんでした」。
姉ちゃんが引っ込んだ後、注文履歴が正常であることを確認し、この日はお開き。
無駄に神経をすり減らし、踏んだり蹴ったりの夜だった。

つづく

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