(443)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~岡村港へのフェリー~

なんとなく桟橋に目をやりながら、「今治港に着いたんはいいんですけど、どこでフェリーを待てばいいんですかね?」。
Sさんに聞いてみる。
「切符を買った時に、『第一桟橋の近くで待っててね』と言われました」。
「では」と、ロードバイクを押して向かう。

トイレなのか買い物なのか知らないが、Sさんがどこかに消えた。
俺ひとり、なんとなく辺りを見回すと、確かに数人のロード乗りがいる。
「でも10人はおらんな。これなら余裕で乗船できるわ」。
少しほっとした。
乗船時間の10分前になり、第一桟橋の前に並ぶ。
俺、Sさん、体格がいかにもスポーツしてる感じのおっちゃんローディー(知らん人)。
岡村港行き、たったの3人。

フェリーに乗船してスタンドにロードを乗っけると、ロープでロードを固定する作業は係の人がしてくれた。
「岡村港まで50分ぐらいゆっくりできる。寝とこ」。
座席でぐったりしていると、「景色いいですよ」。
Sさんに声を掛けられ、デッキに出る。
「あそこに見える橋は、昨日渡った橋ですね」。
「はぁ、そうですね」。
体を休めたいので、また座席に戻る。
Sさんは、岡村港に着くまでの間、ずっとデッキで景色を堪能するようだ。
さすが、旅を最大限に楽しむSさんらしいスタイル。

「まぁ、それはそれとして寝よか」。
座席に戻って目をつむる。
休める時に休みたい。
徐々に無心になり、そろそろ眠りに入るかなというところで、「何や?手、痒いなぁ」。
目を開け、右手の甲を見ると「蟻が歩いてるやんけ」。
蟻に息を吹き掛けて飛ばし、「何で蟻がおるん?」。
眠気は一瞬で消え、考え込む。
「フェリーに蟻?このフェリー、蟻が住み着いてるんか?」。
「いや、ちゃうわ。これやわ」。
膝の上に置いたバックパックに目をやる。
前の日、しまなみ海道のどこかでビンディングシューズとペダルが外れないハプニングに陥った。
その時、クリートのボルトを付け替えている間、蟻がうじょうじょ歩いている山道の地面にバックパックを置いていた(はず)。
「あ~、あの時に蟻が侵入してたんか」。
自分なりに納得のいく答えを見付けたが、「まだ何匹か中におるんか?」と思うと気持ちが悪い。
「うっわぁ…」。
寝てる場合ではない。
バックパックを開け、中に蟻がいないか確認する。

フェリーはいくつかの港を経由して岡村港に着いた。
俺もロードバイクも岡村島に上陸。
Sさんと案内図を見ながらルートの確認をした後、「ちょっとトイレに行ってきますわ」。
俺は港務所に走った。

「お待たせしました。では、行きましょか」。
ゆっくりとクランクを回し始める。
前には、Sさんの後ろ姿。
とびしま海道、スタートです。

つづく

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