(444)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~楽しめない俺~

とびしま海道は、岡村港からゴールである安芸灘大橋を渡った地点まで。
距離としては、約30㎞ほど。
「余裕やろ」と出発。

右手に民家、左手に海。
走り出してすぐ、海に目が奪われた。
前を走るSさん(このブログの読者 40代 男性)が停止。
続けて俺も停止。
ふたりで海を見ながら、「綺麗ですよねぇ」とSさん。
「でも、浜辺にゴミが散らかってるやん…」と思ったが、俺は口には出さなかった。
しかし、5秒後ぐらいにSさんの口から「でも、浜辺にゴミが散らかってますけどねぇ…」と言われた時には、正直焦った。

しまなみ海道と同じく、路面にはコースを指示するブルーラインが塗装され、「これに沿って走ってたらええんやな」と安心。
すいすいとSさんは走り、その後ろをちんたらと俺が追い掛けて、ひとつ目の橋が見えてきた。
岡村大橋だ。

橋の入口まで少しの登り。
「登り、本当に嫌いです…」。
うんざりしつつクランクを回し、ちょっとハァハァ言いながら橋を渡っていると、またSさんが見えた。
橋の欄干にロードを立て掛け写真を撮っている。
「何してんの?」と思った後、「あ、ここか」と。
橋の真ん中が愛媛県と広島県の県境で、そこで写真を撮るのが激熱らしい。
「さすがSさん。旅を最大限に楽しんでる」と感心。
しかし、俺はどうしても楽しめない。

一昨日に尾道のホテルで宿泊した際、「もう家出する」と70前の母親から電話があり、気になって気になって仕方が無かった。
「冷静になって」とか「落ち着いて」と語りかけても、「もう決めた。家出する」、「それでな、家出するから」。
延々と同じ会話を繰り返し、本気なのか酔っ払っているのかわからない。
正直、俺はしまなみ海道やとびしま海道を走っている場合ではない状況なわけで、ずっと不安を感じながらクランクを回していた。
楽しめないながらも岡村橋を渡り、ちょっと進んで中の瀬戸大橋に差し掛かった時に母親からメール。
目を通すと、どうやら、不眠症か何かで病院で薬を貰ったが、飲む量をミスったとかでおかしくなったらしい。
そして、「電話で変なことを言ってごめん。心配させてないか気になってます」。
「気にしてません」と俺は返信したが、「気にしまくってたわ!」だ。

とりあえず母親の様子がわかってほっとした。
のはいいが、Sさんが見えない。
ひとりで先に進んでいるようなので、一応電話してみると、「ブルーラインに沿ってそのまま真っ直ぐ進んで下さい」。
「はい」。
言われた通り、真っ直ぐ進む。

天気は良くないが、信号は無く交通量もほぼ0。
肩の荷が下りた俺は、「よし、楽しむでー。本気で行くでー」と気合い入れて脚を回す。
と、すぐにSさん発見。
立ち止まって景色の写真を撮っている。
「お疲れ様です」。
「お疲れ様です。ここからはお互い自分のペースで走りましょか?」とSさん。
「ルートはシンプルなのではぐれる可能性は低い。適当に走って適当に休憩して、要所要所で合流できればいいじゃないですか」。
そういう意味だと解釈し、Sさんを置き去りにして俺は進んだ。

つづく

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