(450)しまなみ海道を走り、とびしま海道を走り~憧れのZonyk~

「前が全然見えへんやんけ」。
「どういうことや?」。
トンネルの中、後ろを走るSさんは俺を見て「こいつ、遅すぎるやろ?」と思ったかも知れない。
が、ほぼ真っ暗な状態で、俺は勢いよくクランクを回す度胸など無い。
「夜に走るより暗いやん」とびびりながら、ゆっくり進んでいると、途中で気付いた。
「アイウェアのせいか?」。

以前、SHIMANOのアイウェアを激安価格で買った。
調光レンズの優れもので、文句無しのアイウェアだ。
ただ、今回のしまなみ海道、とびしま海道を走るため(ちょっと調子に乗って)、俺は数年前から憧れていたadidasのZonyk Aero Midcut Proを買い、常に夕焼けを見るような感覚で走っていた。

「これのせいやわ」。
Zonykをジャージの胸のファスナーに引っ掛け、「OK!視界良好になった!」。
そう思いながらクランクを回していると、Zonykが胸から滑り、地面に落下。
後ろを走るSさんに拾ってもらう。
「買ったばっかりやのに、いきなり傷いってんちゃうん…?」。
気が気では無かったが、とりあえずトンネルを抜けるまで脚を回し続けた。

やがて光が見え、「STOPで」。
停止。
「ここからのルートはどんな感じでしょう?」。
Sさんに確認を取る。
「この坂を下っていくと、海沿いの道に出ます。それを進めば橋があって次の島へ…ですね」。
「なるほど」。
この時、我々がいた島は上蒲刈島。
次の下蒲刈島を通過すればゴールだ。
Googleマップを見ながら、「いつの間にか、とびしま海道の終盤に入っててんなぁ」と思う。

一気に坂を下り、左手に広がる海を見ながらクランクを回す。
「綺麗」。
「綺麗やけど…」。
「ええ加減、この景色、飽きたな…」。
前に目をやると、Sさんの背中が小さく見え、置いてきぼりを食らった気分。
「まぁ、いい。俺は俺。人は人」。
そう自分に言い聞かせた。

と、この記事を書いていて思うのだが、とびしま海道の記憶があまり残っていない。
要所要所で撮った写真を見れば、少し記憶が甦る。
しかし、淡白な記憶と言うか何と言うか。
別にとびしま海道に魅力が無いわけではない。
信号がほぼ0なので、しまなみ海道より走りやすいと思う(しまなみ海道も大概走りやすいけどね)。
なら、何故印象に残ることが少ないのか考えてみたところ、「あ、食いもんやわ」となった。
ご当地グルメを食べていない。
そういうのが好きそうな同行者Sさんも食べなかった。
いや、食べようにも、そもそも店自体が少なすぎたのかも。

蒲刈大橋を渡る。
交通量が増え、ちょっとごちゃごちゃとした景色が目に入る。
「人が住んでる感じがするわぁ」。
「もうすぐ本州なんやなぁ」。
「とびしま海道も終わるんやぁ」。
クランクを回しながら、そんな心境になった。

つづく

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