(471)ロードの旅 ビワイチ編~琵琶湖大橋へ~

雨が降りしきる中(嫌がらせとしか思えない)、高架沿いの道を進む。
先にある琵琶湖大橋を渡り、念願のビワイチ完遂まで残り30㎞か40㎞ぐらいほど。
あとひと踏ん張りだ。
が、吐き気を催す現実が目の前に立ちはだかった。
「あぁぁぁぁ…、赤い道や…」。
「頼むから死んでくれ…」。

俺が彦根か米原かでスリップし、転倒し負傷したのは赤い道を走っている時。
煉瓦を敷き詰めたか、単に赤に塗装したのか知らないが、雨に濡れたこの道はやばい。
「またここでスリップするんか…」。
心の底からうんざりする。
そこで、検証。
Sさん(同行者)がブレーキレバーを引いた状態でロードバイクを押したり引いたりしたところ、「ここもツルツルですね」と。
「またかよ…」。
俺も実験の意味で少し歩いてみたが、「あかん。確かにすべるわ」。
サドルを降りてロードを押して歩くことにした。

普通の舗装路と、害悪でしかない赤い道が交互に続き、赤色を識別するたびにサドルを降りる。
本当は、歩いてるような時間なんて無かったんですけどね。
守山駅からスタートし、既に10時間半かかっていたので。

気のせいかも知れないが、赤い道がやたら長く感じられる。
「多分やけど、ここまでやな」。
最悪の区間が終わり、サドルに乗ってスイスイと進む…つもりが、空は暗くなり前が見えにくい。
普段なら、いつも装着しているVolt400で十分のはず。
しかし、田舎だからか街灯が少なく、ライトだけでは頼りない。
「Volt400、頑張ってくれ!ただでさえ雨でびしょ濡れの道を走らなあかんねん!」。
そう真剣に念じてみたが、明るさには変化無し。

びびりながらクランクを回し続けたところ、交通量の多い道に出た。
「怖いので歩道を走りますね」とSさんに声を掛け、歩道を走る。
人はひとりも歩いていない。
かと言って、快適に走れたかと言うとそうでもなかった。
暗い上に、ガタガタ。
真っ直ぐ走っていると、急に縁石。
車道の端が変わる区間なのか何なのか知らないが、「縁石に乗り上げ転倒」。
そんな最悪のケースが頭をよぎり、俺はヒヤヒヤしっぱなし。
また、濡れた溝の蓋を見掛けるたびにスリップが頭を過ぎってしまい、気が気ではなかった。

やがて、辺りが明るくなってきた。
街灯は少ないが、道沿いにお店が増えてきたからだろう。
「堅田に近付いてきたみたいやな」。
以前、堅田で大学時代の友人と飲んだ経験があるので、ほんの少しだけ土地勘がある。
「あ、『さと』や。あそこでしゃぶしゃぶ食べ放題を食ったんわ」。
「『天下一品』があるな。ってことは、駅が近いんやな」。
ちなみに、堅田駅に近いということは、琵琶湖大橋にも近い。
琵琶湖大橋を渡ると、ビワイチ(北湖)終了。
「いろいろあったけど、やっと終わりが見えたわぁ」。
少しほっとしたところで、「あ、この交差点やわぁ」。
「これを左に曲がったら琵琶湖大橋があるはず」。

まぁ、「急に回想シーンが割り込んできた」と思って聞いてほしい。
俺は数年前にビワイチに挑戦しようと琵琶湖大橋付近のホテルを予約し、宿泊した。
が、ビワイチ自体は雨のせいで断念。
ただ宿泊しに来ただけ。
その際、琵琶湖大橋を歩いて渡り、「トラックが通るたびにめっちゃ揺れるやん」と、びびりまくった経験がある。
また、「琵琶湖大橋って、片側にしか歩道は無かった」と記憶しているのだが、あまり自信が無い。
一応、Sさんに確認を取ってみると、「両サイドに歩道はありますよ」とのこと。
「それはよかったです。あの、すみませんが、車道ではなく歩道を走っていいですかね?ゆっくり進みたいんです」。
転倒した後、ずっと右手が痛かったが、この時には右胸の方が遥かに痛くなり、あまりハードな動きをしたくなかった。 
「わかりました」とSさん。
「じゃあ、横断歩道を渡らんとこのまま左に曲がって、琵琶湖大橋の歩道を登って行きますね」。 

ゆっくりクランクを回し、登り始める。
と、「あぁ!」。
悲鳴を上げそうになった(「そうになった」だけで、実際には上げていない)。
「これは、いかついなぁ…」。
胸がズキンズキンする。
が、初恋のような高揚感とせつなさが入り交じるズキンズキンではない。
たたの肉体的な痛み。
絶望感しかない。

つづく

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