(473)ロードの旅 ビワイチ編~頭から落ち葉と枝~

ビワイチ(北湖)を終えた。
で、守山駅東口のホテルに宿泊するわけだが、その前にロードバイクを輪行バッグに収納しなくてはならない。
ホテルとは目と鼻の先にある、線路沿いのちょっとした広場にロードをひっくり返し、輪行バッグを地面に広げる。
前輪と後輪を外しながら、ボタボタボタボタ。
暗い中、強い雨が降り出し、自分自身がとても惨めに感じられた。

輪行バッグを担ぎ、2泊目のチェックイン。
フロントで簡単な手続きを終え、エレベーターに向かって歩いていると、出発前に「今日はビワイチ?」と話し掛けてくれたおじいさんスタッフがいた。
「こんばんは」。
「こんばんは」。
そして、笑顔で「今、お帰りですか?」。
「はい」。
おじいさんスタッフは時計を見て、「半日は過ぎていますね。いろんなところを回ってきたんですねぇ」。
俺は、とりあえず「はい」と答える。
「いえね、出発して50㎞地点で転倒し、右手が痛すぎて観光気分などぶっ飛びましてね、これでも寄り道せずに走ってきたんですわ…」とは言えなかった。
夢が無さすぎる。
まぁ、少し穏やかな気分になれたので、また輪行バッグを担いでエレベーターへ向かおうと思ったら、おじいさんスタッフが気を使ってくれ、俺の代わりに担いで運んでくれた。
もうね、言葉にできない喜び。
感謝しか無い。

部屋に入ると、びしょ濡れのジャージやら何やらを脱ぎ、風呂に直行。
体を洗ってリフレッシュしたい。
ボディーソープを泡立たせ、温かい湯で洗い流す。
少しほっとしたのか、「いろいろ苦労したよな…」。
琵琶湖の景色を思い浮かべる。

次は頭。
シャンプーを少量手に取り、髪につけて泡立たせる。
またシャワーで流していると、「何やこれ?」。
「何やこれ?」。
「え?何やこれ?」。
流れ落ちたものを確認したところ、細く短い枝や葉っぱ。
「え?」。
もう一度シャンプーを手に取ってシャワーで洗い流しながら考えた。
「何で俺の頭の中に、葉っぱやら枝が紛れ込んでるんや?」。
「何か、いっぱい出てくるで…」。
右手が痛いので左手を使って髪の中をチェックしていると、「あ!」。
思い出した。
「あの時やわ」。
びしょ濡れの道でスリップし落車した時、道の上で寝転がった。
そう言えば、「頭に葉っぱがついてますよ」とSさんが言っていた(と思う)。
「そうか…。カスクの隙間から入ってきてたんやわ。落ち葉とか落ち枝が」。
「そんなんも知らんと、俺はずっと走ってたんか…」。
急に「気持ちわる!」と思い、もう一度、入念に頭を洗った。

風呂から上がり、スマートフォンをチェック。
Sさん(同行者 三重県某市在住)と飲みに行くので、待ち合わせ場所や時間を決めようとやりとりをする…のだが、既にメールが入っていた。
「駅前に天下一品がありますよ!」と。
まぁ、俺も天下一品は好きだが、「旅先で食うものか?」と思う。
ただ、右手と右胸を負傷したせいで、あまりゆっくり飲むよりも早くホテルで横になりたい。
「そやそや、ビール飲んでラーメン食ってお開き。そっちの方が都合ええかもな」と思い、「じゃあ、天下一品に行きましょか?」とメールを返した。
すると、「いやいや、いろいろつまんでお酒も飲んで、〆にラーメンがいいですねー」。
続けて、「あ、駅の近くに鳥貴族もありますよ!」。
「鳥貴族は、テレビで見たことはあるんですけど、地元には無いんですよ!」。
連発でメールが入った。
鳥貴族に対しても、「旅先でわざわざ行きたいとは思わんなぁ」だが、Sさんの高いテンションが文面から伝わってくる。
おそらくだが、Sさんにとっての鳥貴族は、我々人類にとっての鳳凰や龍、麒麟のような伝説上の存在なのだろう。
「じゃあ、鳥貴族行こか」。
「もうね、むしろ行きたいね」。
そんな気分になり、Sさんに前向きな返事を送る。
「では、鳥貴族に行きましょう。店の前で待ち合わせで」。

つづく

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