(491)ロードの旅 また来たビワイチ~さらに災厄が降りかかる~

小雨の中、クランクを回す。
相変わらず路面は濡れているが、冷静になって考えてみるとビワイチは先々月に走っている。
「完走した経験(北湖)があるんや」と思うと、気持ちに少し余裕が生まれた。

米原を通り過ぎ、長浜へ。
「そういや、ここからしばらくはコンビニが無かったな」と気付き、Sさん(三重県在住 40代 男性)に声を掛けた。
「前に走った時、この先にセブンイレブンありましたよね?ちょっと寄ってもらえますか?」。
「はい」。

右手にドーム球場のような建物が見える。
前回のビワイチの時も疑問に感じた。
「これ、何の施設?」と。
帰ってからネットで調べてみたところ、「長浜バイオ大学ドーム」というらしい。
建物もだが、大学名が既に前衛的。
どういったことを学ぶ学部があるのか興味深い。

ドームを過ぎてすぐのところにセブンイレブン。
「お先にどうぞ」。
Sさんと譲り合い、図々しくも俺が先に入店する。
全身ずぶ濡れで、店員さんにもお客さんにも「こいつ、何やねん?」と思われそうだが、疲れのせいか他人の目を気にする感覚が薄れてきた。
また、考えてみると、汗まみれ、ヘルメットを脱いで頭ボサボサの汚い格好でコンビニに入るのは、ロード乗りの日常だ。
泥臭く汚いのが当たり前。
そう自分を覚醒させ、店員にガツンと言った。
「BIGポークフランク、1本ください」。

店先でSさんを待ちながら、フランクにかぶりつき考える。
「ビワイチのまだ半分も進んでないなぁ」と。
おそらく、まだ3分の1程度。
豪雨のため雨宿りをして30分はロスしたのも痛い。
なるべく明るい時間にゴールしたいので、これから先は確実に進んで行きたい。
俺なりにプラン(希望的観測)を練っていると、買い物を終えたSさんが隣で何かを飲み食いしていたが、それが何かは覚えていない。
まぁ、重要なことでもないので。

「では、出発しましょか」とふたり並んでセブンイレブンの駐車場をゆっくり進み、信号を渡って進路を北に。
ビワイチ再開。
したのだが、ハンドルを握る両手に違和感。
ガタガタというかガリガリというか、路面からの突き上げをダイナミックに感じる。

スッとSさんが前を走り出し、後に続こうとしたが「ちょっと待てよ」。
確認しておきたい。
「まさか、前輪パンクしてへんよな?」。
クランクを回すのは止め、右手を伸ばして前輪のタイヤを触る。
「あかんわ…」。

気持ちは焦る。
が、冷静になろう。
サコッシュに輪行バッグを入れているので、最悪、電車で帰ることはできる。
ただ、この日のために有給休暇を取ったSさんと、俺なりの段取りも一瞬で水の泡に。
冷静になろう。
とりあえず、今すべきことはパンクを直すこと。
予備のチューブは携帯しているので、チューブの破損なら俺だけで何とかなる。
ただ、タイヤが破損している場合、俺の手に負えない。
が、Sさんがいれば大丈夫。
以前、stravaで見た。
タイヤの空気漏れをパッチか何かで塞ぐのを。

保険としてSさんのパッチに期待し、「パンクしましたー」。
前のSさんに声を掛ける。
しかし、Sさんは無反応でクランクをまわし続けておられる。
真横を走る車の走行音に、俺の声はかき消されたのだろう。
「あかんわ。気付いてもらわな」と大声で「Sさーん、すみません!」。
「Sさん!ちょっと!」。
「俺!ピンチ!パンクしました!俺!ピンチ!」。
ダメだ。
バイクはグラベルロードだが、SさんはTTスペシャリストのように高速走行を始め、一瞬で俺の視界から消え去った。

アーメン…。
残された俺は自力でパンクを直さなくてはならない。 
道の端にロードをひっくり返し、前輪を外す。
そして、「チューブのパンクでありますように」と願ったが、濡れたタイヤから泡。
「ここか…。終わった…」。
チューブの破損と違い、タイヤの破損。
俺には直す術が無いのだ。
輪行バッグにロードを収納し、電車でホテルに帰るしかないのか。
まぁ、それはそれで楽やけど。
雨の中、スリップにびびりながら走らなくてもすむ。
風呂に入って、ベッドの上で横になり、昼間から缶ビールを飲むのも悪くない。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする