(492)ロードの旅 また来たビワイチ~四阿のふたり~

「パンクかぁ…」。
「チューブだけならなんとかなるけど、タイヤ、逝ってもうたかぁ…」。
小雨に打たれながら、ロードバイクの前で立ちすくむ俺。
「潔くリタイアするか、先を進むSさん(同行者 40代 男性)に戻ってきてもらって、Sさんが携帯してる(であろう)タイヤ用のパッチで応急処置するしかないなぁ」。
「まぁ、どっちにしてもSさんに連絡しなあかんわ」。

電話をかけてみる。
走行中なのですぐには出てもらえないと考えていたが、意外に早く「はい、何ですか?」。
「あの、パンクしたので進めなくて」。
「え!?何ですか!?え!?」。
真横を走る車の音がうるさくて、俺の声が聞き取りにくいのだろう。
少し大きめの声を出して「パンクしたんです!」。
「わかりました!戻ります!」。
「さっきのセブンイレブンの前の信号、渡ってすぐのところにいますので!」。
「はい!!わかりました!」。

「首の皮一枚繋がったな」。
そう思いながらぼんやり突っ立っていると、ポツポツポツと降っていた雨がポツポツ。
そして、ポツ。
「何や?止みそうやな」。
タイヤさえなんとかすれば完走できそうだ。
ビワイチ。

5分、10分待ってSさんが戻ってきた。
状況を説明し、「タイヤの穴に貼るシールみたいなん持ってましたよね?」と聞いたところ、「それより、まずはそこにある四阿(あずまや 簡素な休憩所)に移動しましょう。雨に濡れますから」。
「はい」と返事し、四阿に向け10mほどロードを押して歩く。
「俺ら、既にずぶ濡れやし、雨も止みそうやから移動せんでもええんちゃうん?」と思いながら。

前輪のタイヤをSさんに見せ、「ここです。穴」。
「この程度ならタイヤブートで大丈夫ですね」。
「携帯してます?」。
「はい」。
ほっとしつつ、ホイールから外したタイヤをSさんに渡す。
そして、穴の位置をもう一度確認した後、裏側からタイヤブートを貼ってもらった。

「いつも親切な人やで。ほんまに」と感心し、作業するSさんを見ていたが、そういうわけにもいかない。
俺のロードだ。
そもそも俺のミスでパンクさせたのだから、俺にできることは俺がしなくてはならない。
Sさんから穴を塞いだタイヤを受け取り、タイヤの片側をホイールにはめようとしたところ、それもSさんがしてくれた。

「あかん。何でもかんでも人任せはあかんわ」。
「そや、破損したチューブの交換は自分でやろう」。
俺は予備のチューブに軽く空気を入れ、タイヤの中に入れ込もうとした。
ら、Sさんもホイールの端を持ち、チューブをはめようとする。
大の大人ふたりがひとつのホイールを手にして、俺がチューブを入れ込んだらSさんの方がはみ出し、Sさんが入れ込んだら俺の方がはみ出し…を2、3回繰り返し、俺は悟った。
「非効率的すぎる」。
すべてSさんに任せることにした。

ほとんどSさんのおかげでパンク修理を終え、再々スタート。
「また30分以上もロスしてもうた…」。
溜め息を吐きながら、長浜城に向けてだらだらとクランクを回す。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする