(494)ロードの旅 また来たビワイチ~アウターで登る~

伝説のパン屋、「つるやパン」をスルーし、旧賤ヶ岳トンネルへ向かう。
わけだが、俺は不安を抱えていた。
トンネルの手前は軽い登り。
登りが大嫌いな俺でも余裕で登れるレベル。
なのだが、普段のメンテナンス不足が露呈した。
実はピエリ守山からスタートした時より、「え…?」と感じていたのだ。
フロントのギアチェンジがスムーズにいかないことを。

「インナー」。
「インナー」。
「さぁ、軽く軽く」。
念じながらシフトレバーを操作するが、ギアチェンジしない。
指の骨が折れそうになるぐらい動かしたが、びくともしない。
短い距離の登りではあっても、アウターでクランクを回すのはそれなりに苦痛で、足の骨が折れる気がした。

Sさん(40代 男性 このブログを読むおおらかな人)はスイスイと前を走る。
俺は苦しんで苦しんで登り終え、旧賤ヶ岳トンネルに着くとSさんはトンネルの写真を撮っていた。
そして、そのSさんとトンネルの写真を撮る俺。

「古くさくていい味出してるよなぁ」。
トンネルをぼんやり眺め、そう感じる。
まぁ、夜にひとりで行くのは絶対嫌ですけどね。
それはそれとして、かなりざっくりだが、ここがビワイチの中間地点(だろう)。
暑いのは嫌だが、このまま晴れてくれればそこそこ快適にフィニッシュとなりそうだ。

トンネルを抜けると、夏らしい景色が広がる。
日光に照らされる青々とした木々に湖。
「やっとビワイチを満喫できる」。
そんな気分になった。
が、気になるのは時間。
クランクを回しながらバックポケットからスマートフォンを取り出し、時間を確認したところ15時前。
たいした根拠は無いが、18時半には日が沈むだろう。
暗い道を走るのは避けたいので、それまでに完走したい。
パンクや豪雨で時間をロスしたが、気合いを入れれば何とかなるだろう。
と、考えたが「Sさん、ちょっと走ったら左手にローソンがありましたよね?寄っていいですか?」。
休憩はしっかり取っておきたい。

ローソンで何を買い、何を食ったかは忘れたが、ぼんやりと駐車場を眺めた気がする。
Sさんともルートの確認以外で何かを話した気がするが、買ったばかりのグラベルロードの話だったか、パーツの話だったか…。
基本、Sさんは親切な性格の人で、自分が調べて知ったことや経験して知ったことを伝えたいという気持ちがあるのだと思う。
それは俺にもあり(ふて腐れた感じでしか伝えられないが)、普段、身近にロード乗りがいないため、わかる人間がいると伝えたいという心理が働くのだ(多分)。
ただ、この時、Sさんから何かを教えてもらった気がするが、それが何かは記憶に無い。
この時の天気はしっかり記憶しているのに。

「では、そろそろ行きましょか」とサドルに跨がる。
ちょっと進むと左手に道の駅。
「道の駅で地元の旨いもん食って休憩した方がよかったよなぁ」。
えっちらおっちらクランクを回し、左に曲がる。
そして、緩やかな坂道。
「おいおい、勘弁してくれよ。俺、アウターしか使われへんのに」。
と、前を行くSさんが急に脚を止め、「この道で合ってますかね?」。
ルートに関してはSさんに頼りっぱなしだったが(いや、トータルで頼りっぱなし)、俺はなんとなく憶えている。
「多分、合ってると思いますよ。前に走った道やと思います」。
そして、またふたりクランクを回し始めた。

つづく

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