(501)ロードの旅 また来たビワイチ~暗闇の阪神巨人~

Volt400(フロントライト)のバッテリーが、今にも力尽きようとしている。
何としてもお亡くなりになる前に充電したいが、雨の中ではモバイルバッテリーまで破損する懸念がある。
「Sさん(同行者 40代 男性 俺に足を引っ張られる人)、早く屋根があるところで休憩させて下さい。充電させて下さい」と願ったが、そんな都合の良い環境は無い。
ここは郊外なのだ。

暗闇の中に登り坂が現れた。
Sさんがクランクを回し駆け上がって行く。
「充電」で頭がいっぱいの俺も、我に返りSさんを必死に追い掛ける。
「どこやねん?ここ」。
頼りにならないVolt400の光がうっすらと映し出したのは、住宅街。
まだ19時だというのに、灯りがともる家はほぼ0。
「ほんまに人が住んでんのか?」と思う。

暗い上に強い雨に打たれ、かなり視界が悪い。
脚は回し続けているが、何もかもが嫌になってきた。
ら、「あそこで休憩しましょう!」。
前方からSさんの声が聞こえる。
「耐えた…。充電できる…。雨宿りできる…」。

Sさんに誘導され、たどり着いたのは公衆トイレ。
おそらく、キャンプ場かと思うが、人はひとりもいないし暗すぎてよくわからない。
ちなみに、公衆トイレも電気が点いついていないので、「Sさん、よくこんなもん見つけたな」と感心した。

公衆トイレの壁にロードバイクを立て掛け、屋根の下に潜り込む。
びしょ濡れのサコッシュからモバイルバッテリーを取り出し、Volt400の充電スタート。
「Sさん、ここで10分ぐらい待機ということでお願いしますね」。

充電しながらただただ突っ立っているのも暇なので、スマートフォンで景色の写真を撮ってみると、アルバムには真っ黒の画像が3枚保存された。
暗すぎて景色として成立していないようだ。
消去。

Sさんは、真っ暗なトイレの入口を出たり入ったりしている。
「ここ、センサーで電気が点くかと思ったら、そうじゃないんですね」と。
好奇心旺盛な人である。

俺がVolt400の充電を怠ったせいで、Sさんまで巻き込んで休憩することになったくせに、「たまったもんじゃないよなぁ」。
「あー、暇や」。
「たった10分でも、ぼけっとしてるんが苦痛や」。
「何か暇潰し、無いんかぁ?」。
と、思い出した。
「今日は大事な日やわ」。
まさに今、甲子園で阪神が巨人と戦っている。

今シーズンのセ・リーグは、間違いなく巨人の優勝だろう。
ぶっちぎりで首位を独走している。
まぁ、それはいい。
我が阪神の優勝は無いにしても、巨人に対し少しは抵抗してもらいたい。
「KO負け」ではなく、せめて「判定負け」で今シーズンを終えてほしい。

「一矢報いろよ、阪神」。
スマートフォンアプリの野球速報を確認すると、阪神2-0巨人。
「おー、今んとこ勝ってるやんけ」。
先発の西勇輝投手が巨人打線を抑え込んでいる。
さすが西だ。
コロナ騒動で誰もが神経質になっているこのご時世で、プロ野球選手という注目される立場にありながらも、敢えて密会不倫する肝っ玉の持ち主。
「西はやってくれる」。 
「こいつだけは、まともじゃない」。
「期待せずにはいられない」。

途中経過を確認しながら、時計に目をやると10分以上経過していた。
Volt400の赤ランプが白ランプになり、「Sさん、そろそろ行きましょう」。

クランクを回し、住宅街から抜け出す。
相変わらず雨は強いが、久しぶりに光が灯る建物を見た。
名前も知らない駅だ。
この高架の先にある堅田駅まで、それほど距離はないだろう(多分)。
堅田駅の方に向かえば、琵琶湖大橋がある。
ゴールは近い(はず)。

つづく

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