(502)ロードの旅 また来たビワイチ~琵琶湖大橋の手前で同行者を待つ~

雨が鬱陶しい。
完全に日が暮れてしまい、辺りは暗く、その上、頭にも背中にも雨が降り注ぎ、濡れた路面に神経質にならざるを得ない。
鬱陶しい。
誰も頼んでいないのに、「世の中とは何ぞや」「仕事とは何ぞや」「人生とは何ぞや」と語りだすおっさんぐらい鬱陶しい。
鬱陶しい。
鬱陶しい。
面倒くさい。

車が真横を通り過ぎた瞬間以外は、明るさをあまり感じない。
電池切れかけ、死にかけのVolt400が照らす僅かな光を頼りに進むしかない。
が、街に近付いてきたのだろう。
道路の両サイドが徐々に明るくなってきた。

お店が増えてきたようだ。
と、前を走るSさん(三重県在住 40代 男性)がサドルから降りる。
そして、「牛丼屋に着きましたよ」。
最初、何を言っているのかわからなかったが、2時間ほど前に俺が言ったのだ。
「吉野家でもあったら寄りましょうよ」と。
しかし、「あ、もういいですわ」。
牛丼を食う気分は既に失せていた。
「では、進みましょう」。
クランクを回し、すき家の前を通り過ぎる。

右手に「和食さと」や「天下一品」が見えた。
以前、堅田の駅から少し歩き、この辺りで飲んだ経験が俺にはある。
また、前回のビワイチでも同じ道を走っているので、少しぐらいの土地鑑はある。
「琵琶湖大橋まで、あと1㎞も無いわ」。
「『ゴールが近い』と何度も自分に言い聞かせたけど、ほんまに近いんやわ」。

「ゴールは俺の手の中にある」。
そう確信しつつクランクを回したところ、せっかく気持ちが盛り上がってきたというのに「迂回して下さい」の立て札。
工事中なのか。
「まぁ、ええか」とメインルートから1本逸れ、すぐにまた戻る。
やや面倒に感じたが、いいのだ。
琵琶湖大橋まで、あと数百mだ。

俺の中でカウントダウンが始まる。
いかにも郊外型のチェーン店が囲む道を突き進むと、琵琶湖大橋手前の交差点。
「ほぼゴールした」ぐらいの位置に俺はいるわけだが、気になるのがSさん。
「遅いなぁ。落車したんやろか?」。
少し心配になり、その場でSさんを待とうとしたが、雨はまだ降り続いている。
俺はサドルを降り、スーパーの屋根の下に移動した。

5分経過。
雨の勢いは少し弱まった。
まぁ、それはいいのだが、「Sさん、ほんまに遅いよなぁ」。
「さすがに遅すぎるで」。
とりあえず電話を掛けてみると、「はい、琵琶湖大橋の登りきったところで待ってるんですけど」と。
なるほど。
俺は待っている立場ではなく、待ってもらっている立場だった。
自分の立ち位置をわきまえて、「わかりました。すぐに向かわせて頂きます」。

つづく

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