(7)アワイチで、自分の不甲斐なさと勘違いっぷりを痛感した。

調子に乗って、初めてアワイチに挑戦した。
クロスバイクを買って以来、自分の走りに自信を持った俺は、「淡路島一周ぐらい余裕やろう」と考えていた。
かなり過信していた。

早めに仕事を終え、まず、明石市に向かう。
17時半頃、明石港よりジェノバライン(船)に乗り、淡路島の岩屋(淡路島の北側にある町)へ。
18時前に着いたが、船を降りると、9月というのに空は妙に暗い。
「西宮と淡路島では日の入りの時間がこんなに違うの?」と少し心配になる。

もともと一泊するつもりだったので、港からじゃらんでホテルを検索する。
ホテルニュー淡路の別館(?)に、20時以降は安くなる部屋があったので、即決。
「割引」とか「激安」とか、俺は大好きだ。
にやけながら、ホテルがある洲本市(淡路の東側にある開けた町)に向けて、暗い道をただひたすら走ったが、徐々に顔から笑みが消えた。
外灯が少ないため、進めば進むほど、辺りが暗く感じるのだ。
不安で仕方がない。

暗くてよくわからないが、俺は登ってるようだ。
灯りが見えてきた。
ローソンがある。
暗くてずっと前が見えない、この不安で絶望的な状況を打開するため、俺はローソンに寄り、焼酎を買い、飲みながら走った。
困難と向き合わなくてはいけない時、酒に逃げる。
それが俺の走り。
ちなみに、この次の年、酔った状態で自転車に乗り、転倒して怪我をした。
本当に痛い目にあった。
以来、法令遵守を心がけている。

闇の中を突き進み、だんだんと洲本が近くなり、それに比例するかのように、信号が増える。
徐々に徐々に増える信号の光を見て、俺は少し安心した。
自転車用のカーナビを確認すると、ホテルは洲本の市街地からちょっと離れているようだ。
ホテル目がけて、崖っぷちのような道を進むと、また外灯が少なくなる。
そして、また不安になるが、たまに後ろから俺を追い抜いていく車のヘッドライトをありがたく感じた。
車が通り過ぎると、また闇夜に戻る。
「あ、灯りがある!」と希望を持てば、ライトアップされたお地蔵さんだったり、よくわからない石碑だったり。
余計に怖いわ。

暗くて狭い工事中の道をぬけると、数件の高級そうなホテル群が目に入った。
俺が予約したホテルもその中にあり、出張や旅行などでビジネスホテルしか泊まらない俺には、あまりに豪華なホテルに見える。
チェックインを済ませ、「ほんまに、こんなええ部屋に泊まってええの?」とたじろぐような部屋に入り、特に意味もなく室内を写真に収めた。
「晩飯、どうしよう?」と思い、近所の飲み屋があるかフロントに聞いたところ、「無い」と。
ただ、「本館のレストランまで車を出すので、よかったらどうぞ」ということで、俺は送迎車に乗った。
いい身分である。
自分が偉くなった気分だ。

朝、海が見えるベランダから景色を眺め、その景色よりも、景色を堪能する自分自身に酔いしれた。
チェックアウトし、ホテル近くの野良猫が集うファミリーマートでおにぎりを買い、しょぼい腹ごしらえ。
一気に現実に引き戻された気分になる。

「さぁ、気を取り直して、淡路島一周するで!」と叫び(心の中で)、勝手にチェックポイントとして設定した洲本城に向かった。
これがもう、本当に、ありえない登り。
「辛い」。
「もう少し頑張ろう…」。
「苦しい」。
「あと少しだけ根性を出そう」。
「死にたい」。
「今すぐ死にたい…」。
そんな感情が交錯する。
なんとか登りきって、天守閣まで辿り着けたのはよいが、俺は考え込んだ。

自分を過信していた。
勘違いしていた。
自転車をなめていた。
今まで、「自転車なんか、ペダル踏んだら進むもの」と簡単に考えていたが、現実はそんなに甘くない。
それを痛感した。
体力も精神力も削られ、俺は淡路島一周を諦めた。
開き直って、家に帰る。
情けない。
自分自身に対し、「みっともない」と思う。
アワイチを実現するのは、その数年後になる。

※この記事は、2019年1月19日、俺が別のブログに投稿した文章を、加筆、修正したものです。

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