(533)ロードバイクに乗って淡路島を走る~朝焼け~

東の空が少し明るくなり、暗さと寒さの苦痛から解放さる…小さな希望を感じた。
「やっとまともに走れそうやわ」。
車道を囲む景色にはまだ薄暗さが残っていたが、これまでよりも積極的に脚を回すつもりで南へ進む。
が、しかし、ずっと時速15㎞~20㎞で走ってきたせいか、それに体が慣れてしまい、思うように脚が回せない。

「まぁ、ええか」。
「朝焼けを見ながら、のんびり走ったらええ」。
俺が走る28号線は徐々に海が近くなり、やっと淡路島に来た気分を味わえた。
「お、観覧車が見える」。
「サービス精神旺盛やん。淡路島」。

海沿いの道…と言うか崖っぷちの道を進むと、視界の左端に小さな休憩所。
「ちょっと休んでいこか」。
俺としては、一度体を休めつつスケジュールについてじっくり考えたい。
本来なら、暗いうちに淡路島の南東部、山岳地帯の手前まで走っておきたかった。
日が昇るのをコンビニで待ち、昇ったと同時に俺は山を登る。
しかし、現在地は山の手前の手前の手前の手前の手前の……。
かなりいい加減な計算ではあるが、1時間から2時間の遅れを認識している。
「おいおい、いくら暗いからって今までの時速15㎞?20㎞?」。
「さすがに遅すぎるで、おい」。
「ロードバイク、なめてるやろ?」。
自分を責めるしかない。

脚を止め、サドルから降りる。
暗闇の中を走った際に生まれた緊張感が途切れたからか、急に眠くなり、ロードバイクを押しながら休憩所のベンチによたよた歩いた。
ベンチに座ると大量の吸殻が地面に落ちており、また、散らかったゴミを囲むようにカラスが群がっている。
「カラス、怖いよなぁ…」。
「でも、眠いし…体を休めなあかんわぁ」。
グロッキー状態で腰掛ける俺。

スケジュールについて検討しなければならないが、「もう、どうでもええやろ」。
「Nさん(50代 男性)が鯛釣りを終えて車で迎えに来るまで、十分すぎるほど時間に余裕があるわ」。
「大した根拠も無いけど」。
眠気のせいで頭が回らず、自然と俺はなげやりになった。

顎が痛い。
眠気覚ましに1時間ほどガムを噛み続けたが、効果はあまり無かったようだ。
考えてみると、出発前に2時間も寝ていない。
「そら、眠くなるよな」と思う。
「これからどうしよ…?走れるか…?」。
打開策としては「眠眠打破やな」なのだが、「あれを飲むんは嫌やわ」とも思う。
味がどうこうではなく、以前、終電まで残業するのが当たり前、1週間に1日休めれば御の字という職場におり、その頃に愛飲した眠気覚ましの飲料は、もう目にするのも嫌なのだ。
自分が「奴隷」や「ネジ」、「駒」だったことを思い出したくない。

「あぁ…、眠たいぜ…。おっつぁん…」。
灰になったあしたのジョーの姿勢で、目をつむる俺。

ではなく、つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする