(535)ロードバイクに乗って淡路島を走る~妥協案~

海沿いの道、28号線を南に走ると、洲本の町並みが見えてきた。
「何や?町全体に煙がたなびいてへんか?」。
妙に灰色がかった洲本。
「朝っぱらから、どっかの工場で火事があったんか?」。
少し高い場所から観察すると、どうやら靄のようだ。

ここまで自然豊かな景色の中を走ったが、洲本は淡路島でもっとも開けた町だろう。
クランクを回しながら、急に景色が変わった感覚を抱いた。

28号線を道なりに進むと、左手に川。
右手には学校や商店、民家。
淡路島へ頻繁に訪れているわけではないが、アワイチ時計回り、反時計回り、ショートカットと何度も走っているので、それなりに土地勘はある。
「久々やなぁ。この道を走るん」。
知っている道を進んでいるからか、安心感に浸り、そして眠くなり…。

出発前、俺は2時間も寝ていない。
またもや強烈な睡魔に襲われた。
一度歩道に逃げて立ち止まり、目をこすってから車道に戻ってクランクを回した。

が、途中で気付いた。
「あかんわ。道、間違えたわ」。
本来、アワイチを達成するには、28号線を道なりに進むのではなく途中で左折。
南淡路水仙ラインを南下し山岳コースに突入…なのだが、安心感のせいか眠気のせいか頭がぼんやりしていまい、曲がるべき交差点をスルーしたようだ。

「戻ろか…。面倒くさいなぁ…」。
「1㎞か2㎞、無駄に走ってもうたなぁ」。
サドルから降り、もう一度目をこすって来た道を戻ろうとしたが、それはそれで嫌。

「ならば…」と妥協案を考える。
戻って南淡路水仙ラインを走れば、綺麗な形でアワイチが達成できる。
でも、嫌。
戻りたくない。
本音として、早く帰りたい。
眠いのだ。
ただ、ショートカットしまくると、わざわざ淡路島まで来た意味も無くなる。
「よし、妥協案として、福良までは行こう」。

福良は、出発地点、淡路島の北端にある岩屋とは真逆に位置する南の港町。
このまま28号線を進み、淡路島の内陸部を経由すれば福良に着く。
「まぁ、福良まで出たらそれなりの成果があったと言えよう」。
とりあえず、自分に対する言い訳は用意できた。

目的地が決まり、少しほっとしつつ脚を回して橋を渡る。
ここから福良までは簡単なルート。
いちいちマップを確認しなくてすむのは有難い。
が、「ちょっと待てよ」。
「自分に対する言い訳を用意できたのはいいが、人に対してはどうだろう?」。
「さっき、俺、ツイートしたよな。『アワイチ頑張ってます!』とかほざいてへんよな?」。
「『アワイチ』と言えば嘘になる。海沿いの道、南東の山岳コースは走れへんのやから」。
気になってツイートを確認。
「うん、『淡路島に来ました』とは言ってるけど『アワイチ奮闘中!』などとは言っていない。嘘はついていない」。
胸を撫で下ろし、俺は福良に向けてまた走り出した。

つづく

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