(540)ロードバイクに乗って淡路島を走る~やっと着いたよ~

前を走る見知らぬ男子高校生、ロデム。
立ち漕ぎでペダルを踏む彼を、俺は僕(しもべ)に認定した。
「頑張れよ。風除けになってくれ」。
サイコンに目をやると、時速25㎞前後。
ママチャリか何かわからない自転車で激走するロデムに、「このまま俺を福良まで牽いてくれ」と願う。

「ハァ、ハァ、ハァ」。
肩で息をするロデム。
よほど疲れているようだ。
しかし、彼は脚を緩めず必死に走り続けた。
おそらく、学校に遅刻したくないのだろう。
「まだまだ青いな」。
俺はそう思い、彼の後ろ姿に語りかけた(心の中でね)。
「1回遅刻したぐらいで、人生は狂わんよ」と。

俺は大阪の某アホ大学附属高校出身だ。
入学してすぐの試験で上位に食い込み、「こいつら、ほんまアホやな」と余裕をかまし、パチンコに勤しんだ。
登校前に朝刊を読み、パチンコ屋のチラシ、新装開店のチラシを目にすると、「挑戦状か…?」。
そう解釈し、午前中はパチンコ屋、昼から高校へ…ということが何度かあった。
まぁ、そんなわけで、学校に遅刻することなど大した問題では無いと思っている。
ちなみに、今の俺は博打をしない。
高校、大学で、「博打は金と時間の無駄」と学んだからだ。

クランクを回す。
車道の狭さと交通量は相変わらず。
俺ひとりならイライラしていただろうが、今は違う。
ロデムが道を切り開いてくれる。
「ほんまに助かるわぁ」。
「出来ることなら、俺を福良港まで牽いた後に登校してほしい」。
「いや、ロデムよ。今日は学校を休め。俺を福良港まで導いたら、もう学校を休め」。
「お前はよく頑張った」。
「てか、学校辞めろ。福良港まで俺を導いたら、もう学校を辞めろ」。

心の中でロデムに語り掛けていると、「何!?」。
ロデム、急に左折。
「うっわぁ。学校行きやがった」。
消えて行く彼の背中を見て少し寂しい気分になったが、「こいつ、裏切りやがったな…」。
俺の中で、そんな感情が湧き上がった。
「くそっ…」。

再びひとりで走る。
車道が混み出すと歩道に逃げ、ガタガタの歩道が不快に感じられれば車道へ。
景色を楽しむ気にもなれず、いくら脚を回しても進んだ気がしない。
ただただ走りにくくてストレスが溜まるだけ。

「ロードバイクに乗る。それは俺の趣味」。
「趣味なのに、何故こんなに不快感を催しながら脚を回さなくてはならないのか?」。
「それは、お前が道を間違ったのが原因やろ?」。
問い掛ける俺と答える俺。
そして、「まぁ、本を正せば俺が悪いんや」とジャッジを下す俺。
脳内で議論していると「やっとや…」。
やっと着いたよ、福良港。

つづく

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