(547)ロードバイクに乗って淡路島を走る~五色町の中で~

「鶴瓶のコミュニケーション能力が、俺に少しでもあればなぁ」。
「旅番組に出てる時の、鶴瓶のコミュニケーション能力。ほんの少しでも俺にあればなぁ」。
信号待ちの間、五色町の町並みに目をやりつつ、心の底から願った。
「あぁ、鶴瓶のコミュニケーション能力、欲しいよなぁ」。

朝の4時過ぎからひとりで走り始め、もうかなりの眠気と疲労を感じる。
こんな時にこそ地元住民と言葉を交わし、ほっこりしたい。
心が癒され、体も癒さるような気がする。
しかし、それは俺には無理だ。
俺には、旅番組に出てる時の、鶴瓶のコミュニケーション能力が無いのだ。

五色町の小さな町並みは、それはそれは小さくて、5分も走れば消えて無くなり、また自然豊かな景色に囲まれた。
まぁ、結果的に地元住民とコミュニケーションを取ることも無く町を通り過ぎたわけだが、仮に鶴瓶が俺に乗り移っても無理だったと思う。
と言うのも、町には走る車どころか歩行者すら見掛けなかったからだ。
さすがの鶴瓶でも、絡む相手が誰もいない状況ではお手上げだろう。

と、先ほどから鶴瓶のコミュニケーション能力を高く評価している俺だが、実は鶴瓶で爆笑したことが一度も無い。
そうそう、20年以上前、上岡龍太郎と鶴瓶の「パペポTV」という深夜のトーク番組があり、友人に誘われ読売テレビのスタジオへ観覧しに行った。
「鶴瓶、口数は多いけどまったく面白く無いよなぁ」。
収録が始まってしばらくはそう思ったが(まぁ、最期まで面白くなかった)、鶴瓶が喋らないと上岡龍太郎も喋れないので、鶴瓶の存在が必要不可欠なことに途中で気付く。
「なるほどなぁ」と感心していると、鶴瓶も仕事だ。
延々と喋り続ける。
聞いていて、「ここで笑いを取ろう」と思って喋っているのはわかる。
鶴瓶は頑張っている…のだが、俺としては「ボケた=笑う」ではなく、ボケた上で精査し「これは傑作やわぁ」と本能で感じた時に笑うのだ。
残念なことに、この日の鶴瓶にはそこまでの面白さを感じず、俺はがっかりした気分で読売テレビの社屋を出ると、夕日に染まる大阪城の天守閣が遠くに見えた。

ではなく、大学を卒業し社会人になってから鶴瓶の能力に敬服するようになった。
面白くなくても鬱陶しくはない。
愛嬌があり、嫌われないキャラ。
「うん、見習わなあかんわ」。
「これから鶴瓶『師匠』と呼ぼう」。

とまぁ、鶴瓶師匠はさておき、「残り30㎞ぐらいかなぁ?」。
また左手に海が見えた。
これからも眠気と戦いながらクランクを回し続けるしかない。
と、右前方にロードバイクに乗った男性か見える。
ヘルメットを被りアイウェアを掛けているため、年齢はわからないが、ロードに乗っているというだけで親近感が湧く。
また、人恋しさもあり、すれ違う前に右手を上げると、余裕で無視…。
「おいおい。こいつは俺以上に、旅番組に出てる鶴瓶師匠コミュ力のあれへん奴やな」。
一瞬、地面に唾を吐きそうになった。

つづく

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