(549)ロードバイクに乗って淡路島を走る~ゆっくりのんびり~

「うちの近所では見掛けへんよなぁ」。
海が近いからか、または山が近いからか、馴染みの無い鳥を目で追い掛けながら、淡路サンセットラインを北に進んだ。
民家が少なく、たまに視界に入ることがあっても「ここに住む人はどんな生活をしてるのか?」と思う。
「台風が来た時なんか、生きた心地せえへんやろなぁ」。
まぁ、余計なお世話だ。

田舎の小さな町の、更に郊外を俺は走っているわけだが、どうにも不思議なことがもうひとつ。
道の両サイドにちょくちょく見える、妙に大きくお洒落なカフェやレストラン。
「こんな人里離れた場所に店を構えて、いったい誰が来るんや?」と思ったが、どこもそれなりに流行っているようだ。

いかにもインスタ映えしそうな、海が間近に見えるブランコを設置したパンケーキ屋。
「俺が行ったところで、柄でも無いしなぁ」。
「そもそも、パンケーキ食いたいと思ったことも無いしなぁ」。
そんなことを思いながら、しばらくクランクを回すと白い歪な建物。
「何か変なもんあるなぁ」。
「何でか知らんけど、人多いなぁ」。
帰りの車の中でNさん(50代 男性)に話したところ、キティちゃんのレストランだったそうで、「ガンダムレストランやったら立ち寄ったのに」と思った。

「また見えてきたで。お洒落な店」。
脚を止め、まじまじと見る。
「Ocean Terrace?ステーキ&カレー?」。
看板に目をやると、急に腹が減ってきた。
ステーキもカレーも食いたい。
しかし、「我慢しようぜ、俺」と自分に言い聞かせる。
夕方、家に帰った後、またNさんと待ち合わせて飲みに行く予定が入っている。
「悔しいわ…。ステーキもカレーも魅力的やけど…、死ぬ気で食いたいけど…、今の俺はがっつり食われへん…」。
ブラケットを強く握り、またクランクを回す。

眠気、疲労感、そしてステーキ&カレーを食べられない絶望感が加わり、走る気力が0に近付く。
それと比例するようにスピードは落ち、ママチャリに乗って近所のスーパーにネギを買いに行くおばちゃん以下に。

「あかんわ」。
「あかん。あんまりちんたら走ってたら、車に迷惑掛けてまうわ…」。
と、海沿いに自転車道が出現。
「何や?『ゆっくりのんびりサイクルレーン』って?」。
「おぉ…。今の俺には、まさにうってつけ!」。
「OK。ゆっくりのんびり走らせてもらおうやんけ!」。
期待に胸を膨らませ、ゆっくりのんびりとクランクを回した。
が、100mぐらいでサイクルレーンは途切れた…。
「アホか!?中途半端なもん、作りやがって!」。

地面にロードバイクを寝かせ、俺もその場にへこりこむ。
「走る気無くすし、本気で眠いわ…」。
この日、俺は2時間も寝ていないのだ。
身も心もガッタガタだが、「ちょっと待てよ」。
「そういや、この先に公園があったような。そこで寝よかぁ」。

立ち上がり、「一応、時間を確認しとこかぁ」とバックポケットからスマートフォンを取り出す。
「あ」。
Nさんからメールだ。
「なになに、『アワイチ、どんな感じですか?』」。
俺は「どないもこないもないわ。この苦痛をひとことで表現でけへんわ」と思い、返事はせずにサドルに跨がった。

つづく

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする