(550)ロードバイクに乗って淡路島を走る~寝場所を探し彷徨う~

ゴールを目指して突き進む…と言うよりも、眠れるスペースを見付けるためにクランクを回している俺。
「…」。
淡路島の西側、岩屋へ向かう道を半眠りで進む。
が、「おかしいよな…」。
以前、同じ道を走った際、左手に公園があったはず。
生垣にロードバイクを立て掛け休憩した記憶があるのだ。
足下に走り回っている蟻。
その映像が、しっかりと脳裏に焼き付いているのだが、幻覚だったのか?

悩みつつゆっくりと進んだが、見当たらない。
全く、どこにも見当たらない。
「公園、どこ行った?やっぱり俺は夢でも見てたんか?」。
まぁ、Googleマップを確認すれば何か手掛かりを掴めるかも知れないが、それも面倒に思える。
「もう、どこでもええわ。目立たん場所でしゃがめるスペースを確保しよう」。

時速20㎞に満たない低速で、俺はぐったりしながら走り、「ここでええやろ」と脚を止める。
見た感じ、操業しているとは思えない工場。
その裏手に、以前は駐車場として利用していたのか、雑草が生い茂るスペースがあった。
くそ暑い季節なら虫がいそうなので回避…だが、今の季節は大丈夫。
従業員用出入口のドアの横にロードを立て掛け、しゃがみこみ、そして10分ほど目を閉じた。
本気で寝ているわけではないが、じっとしているだけで徐々に体力が回復した気になる。
古いゲームだが、イースやハイドライドのように。

ビンディングペダルにシューズを乗せ、「さぁ、行こか」。
再度、北へ向かう。
と、テトラポッドに股がって、釣りをしている男性が視界に入った。
「寒くないんかなぁ?」と思い、ぼんやり眺めていると、釣り人はゆらゆらしながら餌箱へ手を伸ばし、またゆらゆらしながら餌を撒いた。
「いやぁ、なかなかのバランス感覚やわ」。
一瞬、曲芸でも見た気分になったが、見とれている場合ではない。
「あかんわ。先に進もう」。

景色が変わらないため実感は湧かないが、おそらくゴールまであと少し。
残り10㎞~15㎞ぐらいだろう。
まぁ、願望だが。

気持ちとしては、もうゴールしたも同然。
そして、何度目かの気の緩みが生じ、また睡魔に襲われた。
「寝かしてくれ…」。
「ゆっくりできる場所、どっかにあれへんか…?」。
辺りを見回すと、公園でも海水浴場でも無さそうだが、海沿いに開けたスペースが。
「何か知らんけど、ここで休もう」。
「もし私有地やったら具合悪いけど、まぁ、ええか」。
地面にロードを倒し、俺は体育座りで海に目をやった。
「10分。10分ほど、ここで目を閉じてじっとしとこ」。
傍から見ると、「こいつ、何ひとりで黄昏てんねん?」だろうが、いちいち気にしていられない。
俺は死ぬほど眠いのだ。

つづく

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