(566)ロードバイクに乗って地蔵寺、そして大日寺へ。-6

地蔵寺から大日寺に向けてスタート。
まずは緩やかな登り。
「今のところは余裕やけど、あの山の向こうまで行かなあかんのかぁ…」。
これから先にあるだろう、いかつい傾斜の坂を想像してし、ただただ気が滅入る。

自然とうつむき加減になり、そしてクランクを回す。
「あぁ…、列に並んで注射打たれるのを待ってる気分やわ…」。
緑に囲まれた中、景色や空気を味わう余裕など無い。
間も無く、俺はもがき苦しむのだろう。

顔を上げて前を向くと、高速道路の橋脚。
まだ傾斜は緩やかだが、きっとあの向こうは…えげつない坂。
「死んでしまいたい」と心の中で叫ぶのは、10回だろうか…?
100回だろうか…?
そんなことを考えていると、また頭が下がり、溜め息を吐いた。

俺は死を覚悟していた。
しかし、意外なことに、高速の高架をくぐり抜けても緩やかな坂が続く。
「あら?まだまだいけそう」。
拍子抜けする俺。
気持ちに余裕が生まれたからか、脚を回しつつ辺りを見渡す。
右手にはビニールハウスと農家がちらほら。
左手に目をやると、少し先に神社。
「気を許したらあかんわ。あの神社の先からえぐい傾斜になるんやろう」。

もう一度覚悟を決めようと、神社の手前で停止。
山の中にぽつんとある神社。
小さくも古めかしい、威厳を感じされる空気。
「神様、10分だけでいいので、ここから先の坂を平坦に変えて下さい」。
心の中で手を合わせ、俺はサドルに股がった。

さすがに平坦にはならなかったが、相変わらず緩やかな登り。
「おかしいよなぁ」。
「Googleマップで大日寺の場所を確認したら、山の中やったはず」。
「えぐい登りが続くと想像してたけど、今のところのすいすい進んでるで」。
「それが逆に不吉としか思えんわ」。
そんなことをひとり呟いていると、前から歩行者。
よく見ると、外国人が下りてきた。
お遍路さんの格好ではなかったので、単に登山を楽しんでいただけなのか。
まぁ、そんなことはどうでもいい。
久々に人を見掛けた気がする。
俺は軽く会釈して、すれ違った。

緩やかな登りは更に続く。
が、「きっとこの先に悲惨な勾配がある」と絶望的な気分でクランクを回していると、右手に何か見える。
「何の建物や?」。
ゆっくり、ゆっくりと近付いたところ、「前に岩があるな。何か書いてあるで」。
目を細めてそれを読むと、「え、大日寺?」。

余裕で到着。
俺は何に対して悲観し、びびっていたのだろうか…。

つづく

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