(570)ロードバイクに乗って地蔵寺、そして大日寺へ。-10

今回のライドにおける目的、「ロードバイクに乗って、地蔵寺へ大日寺へ」は達成した。
後は、Nさん(50代 男性 趣味は釣り)との待ち合わせ場所、渡船乗り場の駐車場まで走り、Nさんを待つ…わけだが、時間的に余裕がありすぎる。
俺はNさんの車にロードを積み、鳴門を中心に走った後、いつもひとり飲み会をする福丸水産へ向かった。

福丸水産はバーベキューを楽しめる環境が整った店だ。
入口を入ってすぐに、魚やら肉やら貝やらエビやらとバーベキュー用の食材売場がある。
が、俺はひとりバーベキューを楽しむ度胸は無い(ひとり焼肉は余裕)ので、この店を訪れるたびに定食を注文する(ビールも)。

レジ近くに貼られたメニューなど、まともに見る必要は無い。
「天ぷら定食で」と店員さんに伝えればよい。
が、「カキフライ」の文字が視界の隅に入った。
天ぷら定食は何度も食っているため、「量も味も満足できる」といった信用がある(俺の中で)。
ただ、牡蠣も大好きで…悩む。
人生を左右するレベルで悩む。
そして、ふと、「同じような経験をしたな」。
思い出した。
そう、あれは高3の時だ。
親元を離れ東大に進むか、実家から通える京大に進むか、心の底から俺は悩んだのだ(大嘘です)。
結局、「今の時期は牡蠣やな」という判断で、「カキフライ定食を」。
店員さんに伝え(ビールも)、テーブル席に座った。

「どうぞ」。
まずは瓶ビールが提供され、それをグラスについで、ひとりでチビチビと。
口に含んだのは少量ではあるが、一応、60㎞近く走った後だからか(達成感はあまり無いけどね)、すぐに気持ちが良くなってきた。
チビチビ…チビチビ…と、しばらく待ち、やっと来ましたよ。
カキフライ定食。

第一印象としては、「おぉ、なかなかのボリュームやんけ」。
カキフライが4つとか5つのしょぼい定食ではない。
「では、とりあえず1つ頂こうか」と思ったが、食べる順番や役割を整理しておきたい。
プランを決めたい。

まず、この食事を前半と後半に分ける。
前半の主役は、ライス。
ライスを中心にカキフライを食い、漬物や小鉢を挟みつつライスも食う。
ライスが無くなった時点で、前半は終了だ。
そして、後半の主役はビール。
ビールを飲みつつカキフライ。
敢えて後半に残しておいた冷奴も、対ビールとして効果を発揮する計算だ。
「我ながら完璧やな」と思う。
ただ、「飯食うのに、いちいちルール決めんのしんどいわ」とも思う。
そう言えば、「世にも奇妙な物語」でも似たような話があった気がする。
確か、駅弁がテーマだったか。
まぁ、それはいい。
「もう自由に食おうぜ」と自分に指示し、自由に食ったつもりなのだが、経過を辿ると、何故かプラン通りであった。

よく食べた。
素直に、動きたくない。
5時間ほどぐったりしたい気分だ。
が、渡船乗り場の駐車場へ移動しなくてはならない。
Nさんの車に乗せてもらい、家に帰らなくては。

小鳴門大橋を右手に眺めつつ、だらだらと歩いて駐車場に到着。
Nさんに借りた車のキーでドアを開け、助手席にもたれて「さぁ、寝よかぁ」。
目を閉じた後、20分ほどして釣り道具を抱えたNさんが戻ってきた。
「お疲れ様です」。
「お疲れ様です」。

普段はあまり表情を変えないNさんだが、ハンドルを握るこの時のNさんは少し違った。
気のせいか、笑みが溢れているように感じられる。
「何かええことがあったんか?」。
「はっ!」。
「まさかとは思うが、もしかして、今日は大漁?」。
Nさんに確認を取る。
と、ニヤニヤしながら俺の方を向き、「今年最高でしたね」。
真鯛を釣りまくったらしい。

車は大鳴門橋を渡り、淡路島に入る。
「日が沈みますね」とNさん。
西の海に目を向けて、「そうですね」と俺。
「俺ね、何度も淡路島を走ってるから道の名前を覚えたんですけど、あの西側の道、『サンセットライン』っていうんですよ」。
続けて、「いつも早い時間帯にロード乗るから、今、初めてサンセットを見ましたわ」。

しばらく進み、「ゆっくり太陽を眺めましょう」とNさん。
PAに駐車して、展望台から西の空を眺める。
何故だろう…。
心が燃え上がる…妙な感覚だ。
ドキドキ…、ドキドキ…。
お互い無言のまま時間が過ぎ、最初にNさんが口を開いた。
「愛しているよ」。
俺とNさんは見つめ合い、おっさんふたりで抱きしめあった…。

fin

ではなく、お互い西に向けてスマートフォンを構え、「う~ん、なかなかうまく撮れませんねぇ」。
「スマホのカメラの限界を感じますねぇ」。
何枚も何枚も写真を撮ったが、結局、納得のいくサンセットは撮れなかった。

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