(589)ロードバイクに乗って川西方面へ-2

随分と前の話だが、俺は営業職として阪神間のヘアサロンを回りまくった時期がある。
あれは確か、芦屋のサロン。
商談のため、ソファーに座りオーナーを待っていると、客と客の髪を切るスタイリストの会話が聞こえた。
「こっちの方は変わってますよね。大阪から神戸まで3本も電車が走ってて、ひとつでいいじゃない?って思うんですけどねぇ」。
「わかります。僕も仕事でこっちに出てきて、最初は同じことを思いましたよぉ」。
客もスタイリストも大阪、または神戸の人ではないのだろう。
まぁ、それはそれとして、「言われてみればそうやなぁ」。
大阪市内で生まれ育った俺は、神戸までJRと阪急、阪神が走っているのは当たり前だと思っていた。
また、阪神間の西宮市でひとり暮らしを始めてからも、それが当たり前すぎて考えたこともなかった。

阪神間における阪神沿線と阪急沿線、JR沿線の立ち位置をざっくり説明すると、阪神は庶民的で阪急はええとこ、JRはその中間と言ったところか。
狭い範囲ではあるが、それぞれイメージが違う。
立地的にも、阪神は南、阪急は北、JRはその中間。
ちなみに、俺は西宮市の阪神沿線に住む庶民的な40代の男性。
飲みに行くテリトリーは南の阪神から中間のJRが多く、北側(阪急沿線)の土地勘はあまり無い。
馴染みもあまり感じない。

と、前置きが長くなったところで、話を元に戻す。
川西能勢口に向かうため、俺は尼宝線を北に進んでいる。
阪神バスとのデッドヒートを終え、JRの高架を越えた。
あまり馴染みを感じないゾーンに突入したわけだ。
「まぁ、ええけど」。
クランクを回す。

見えてきた。
出発前から警戒していた、阪急の陸橋。
数年前、我がサイクリングチームのチームメイトAと猪名川サイクリングロードに向かった際、びびりまくった阪急の陸橋。

あちこち走っていると、その分、路面の状態が悪い道と向き合わなくてはならない。
嫌でも。
まぁ、進行方向に向かって(正面から見て)、横に亀裂が入っている道はまだいい。
許せる。
ただ、縦は怖い。

下手に踏んでしまうとスリップする懸念がある。
で、阪急の陸橋は、縦方向に亀裂はないが、盛り上がった部分と凹んだ部分があり、波打った感じ。
もっとシンプルに説明すると、縦方向に起伏がある。

前を走るチームメイトAは積極的にペダルを踏んでいたが、俺はびびりまくり。
道路の左端を走っているつもりが、徐々に真ん中に寄せられ、スリップしないよう気を付けて左端に戻り…を繰り返し、短い区間だが生きた心地がしなかった。

「同じ思いはしたないわ」。
阪急の陸橋を睨み付け、俺は歩道を選択する。
俺はプロでもなければプロを目指している競技者でもない。
安心、安全こそがプライオリティーレベルの最高位だ。
ママチャリに乗ったパーマのおばちゃんとすれ違い、俺は陸橋の緩やかな坂を登った。

つづく

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