(591)ロードバイクに乗って川西方面へ-4

不思議だ。
俺はロードバイクに乗ってサイクリング中のはず。
なのに…、脚を回したくても回せない。
前に並ぶ7、8台の車は微動だにせず、俺はイライラしながら足下を見詰めた。

「遠くまで速く走りたい」と思いロードを買ったが、近場を走るたびにストレスが溜まる一方だ。
しまなみ海道とは違う。
「結局、俺はサイクリングロードを走ってるんが一番幸せなんやわ」。
自然と溜め息が出た。

「諦めるしかないんや…」と、泣き声と皮肉を言いたくなる。
ただ、よく考えよう。
俺は、飽くまで趣味として公道を走らせてもらっている立場。
前に目をやると、仕事で走る回る社名の入った営業車、荷物を運送するトラックがちらほら見える。
同じ道を共有していても、優先されるのは彼らだと思う。
頭ではわかっているのだ。
もう何度目かわからない葛藤を感じ、イライラ…イライラ…。

クランクを回す。
「やっと走れるわ」。
そろそろ左折しなければならない。
川西能勢口へ進むには、どこかの交差点で曲がるのだが、「『田中』やったかなぁ。『鈴木』やったかなぁ」。
確か、ありふれた名字と同じ名前の交差点。
「あ、多分あれやわ」。
ピンときた。
「北村」という交差点で、ハンドルを左に曲げる。

川西能勢口まで、あとは一直線。
交通量が少なくなったからか、道が広く感じ、「めちゃめちゃ走りやすいやんけ!」。
「これ、これ。こういうのを求めてたんやわ、俺は」。
楽しくなってきた。
が、その矢先、背中に振動を感じる。
立ち止まり、バックポケットからスマートフォンを取り出すと、LINEの通知が2件。
おそらく、新日本プロレスかクリーニング屋。
またはドミノ・ピザだろう。
内容など確認せず、またクランクを回し始めた。

少し先に高い建物が見える。
まぁ、梅田や三ノ宮では別に珍しくない高さだが、ここまでずっと低い建物が視界に入ってきたせいか、5階建て以上の建物を見ると、「うほっ、大都会!」。
どうやら、川西能勢口が近付いてきたらしい。

まぁ、特にドラマチックなことも無く川西能勢口まで進み、目的地に設定しているおにぎり屋に向かう。
「確か、ここを右に曲がってちょっと進んで…やな」。
そして、特にドラマチックなことも無くおにぎり屋に着き、俺はサドルから降りた。
「まだ開いてるみたいやな。良かったわ」。
閉店時間の15時には間に合った。

カスクとボトルをバッグに詰め、シューズの底にクリートカバーをはめる。
グローブを外し、何となくスマホを手に取ってStravaを確認すると、家からここまで50分ほどかかったと。
「おいおい、距離は15㎞程度やで」。
そう呟きつつ、赤信号と微動だにしない車の列を、映像として脳裏に浮かんだ。
「ガッデム…」。

つづく

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