(602)福島の551蓬莱へロードバイクに乗って走る-5

家まで12㎞~13㎞。
単純計算では、30分。
30分後に、俺は温かい豚まんを頬張る…つもりでいるが、おそらく1時間近くかかるだろう。
最初に甘く見積もって、途中で余計なアクシデントに見舞われるのが、俺の走り。
いつものことだ。

長い淀川大橋を渡り、国道2号を更に西へ走っていると、「違和感あるなぁ」。
予想通りアクシデントだ。
信号待ちの間、左足首に目を落とし「何でや?急に痛なってきたわぁ」。
この先、左足をかばいながら走らなければならない。
まぁ、ゴールまで100㎞となれば気が滅入るが、たかが10㎞ちょっとだ。
「ゆっくり走れば、右足1本でも何とかなるやろ」。
そう楽観的に考え、クランクを回した。

時速20㎞前後で進む。
正直、惨めな気がしなくもない。
ただ、今の俺にはこれが精いっぱいだ。
また、町並みに目をやると、少しずつではあるが家に近付いていることを実感し、充実感を得た。
少しね。

走っていて、感覚でわかる。
「俺、おっそいわぁ」。
サイコンに目をやると、時速17㎞。
最早、「ママチャリでええやんけ」レベルだが、いいのだ。
「うん、ゆっくりでええ」。
「別にレースに出てるわけちゃうんやから、左足をかばいながらゆっくり走ろう」。
しょぼい自分を慰める。

武庫大橋が見えた。
間も無く、尼崎から西宮に入る。
スタートから25㎞ほどしか走っていないため、体力には余裕がある。
が、少し休憩しよう。
「心にゆとりを持ったライドもなかなか乙なものですね」。
ぼんやりと武庫川を眺めながら、ボトルの水を喉に流し込む。

10分ほどぼけっとしていると、辺りが薄暗くなってきた。
「そろそろ帰ろうか」。
「どこのコンビニに寄り道して缶ビール買おうか?」。
「あ…」。
今さら気付いた。
俺は、豚まんがまだ温かいうちに家に戻りたかったのだ。
まったりとクランクを回し、まったりと川を見つめながら俳句をしたためている場合ではない(したためてないけど)。

「左足首なんか、折れてもええわ」。
必死で脚を回す。
心の片隅で「今頃死に物狂いになっても遅いよ」と思ったが、1%でも可能性があるのなら、それに賭けたい。

往復で約25㎞。
最後の方は、迂闊にも豚まんの存在を忘れてしまい、のんびり休憩してしまったが、左足首の痛みと戦いながら俺なりに頑張った。
が、豚まんにかぶりつくと溜め息しか出なかった。

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