(606)千博屋の唐揚げ弁当を目的とした淡路島ライド~由良港~

5時30分。

由良港に着く。
港の隅には、既に何台かの車が停められていた。
「みんな、釣りに来た人なんかなぁ?」。
「朝早いのに、ようやるわぁ」。

Nさん(50代 男性)は車から降り、トランクから釣り道具を出す。
「じゃあ、行ってきます」。
そう言い残し、小走りで桟橋へ。
俺は車内でぼんやり。

窓の外に目をやる。
「まだ真っ暗やなぁ」。
走る気になれない。
少し外の空気を吸おうと車を降り、意味も無く屈伸をする。

「まだ、ちょっと寒いなぁ」。
車内に戻り助手席に座っていると、特にすることも無いため、退屈で退屈で仕方が無い。
ただ、ひとりぼんやりと車の天井を眺めた。

退屈な時は何をするか?
この記事を読むあなたの習性はわからないが、俺は意味も無くトイレに行く。
仕事中に暇な時、くだらない飲み会で「早く終われ」と思っている時。
家でもそうだ。
退屈になると、とりあえずトイレに行く。
「確か、道路を渡ったところに公衆便所があったよな」。
車を降りる。

と、Nさんが小走りでこちらに向かっているのが見えた。
「何か忘れ物ですか?」。
「はい」。
ペットボトルのお茶を車に忘れていたらしい。
「釣り、調子はどうですか?」。
「もうねぇ、全然ダメですね。ちょっとこれを見て下さい」。
Nさんは、笑顔で左手を差し出した。
「何やろ?」と思い目を向けると、時刻の上に魚が表示された時計。
緯度と経度を設定することにより、泳いでいる魚の量を教えてくれるらしい。
「この時計によるとね、たくさん釣れるはずなんですが、感触としてはね、今日はダメみたいですね」。
なるほど。
激アツのスーパーリーチがかかっているが、結果としてはかすりもしないと。
「では」。
お茶を持ったNさんは、また桟橋の先に消えた。
「何や?先行きが暗い割には、えらい楽しそうに話してたよな」。
ポケットに手をつっこみ、俺は公衆便所に向かう。

6時30分。

助手席でだらだらしていると、また眠たくなってきた。
缶コーヒーを2本も飲んだのに。
「起きろ。もうちょっとしたら外が明るくなる。走り始めるんや」。
そう自分に言い聞かせたが、「あかんわ。寝よう」。
目を閉じる。
しかし、車内は寒すぎて眠りにつけない。
何度も寝返りを打ち、寝るわけでもなく起きるわけでもなく、無駄な時間を過ごす。

7時25分。

ふと目を開け、窓の外に目をやる。
「ええ天気やなぁ」。
夜が明けたようだ。
が、寒い上に中途半端に眠い。
走る気になれない。
引き続き、車内でぐったりする。

8時5分。

「ほんまは7時にスタートするはずやったのに、俺は何をしてるんやろ?」。
「だらだらするために淡路島まで来たんか?」。
自分を問い詰めた後、気合いを入れて車から出た。
トランクを開け、ロードバイクを引っ張り出し、カスクを軽く頭に乗せる。
「さぁ、そろそろ出発しよかぁ」。
サドルに股がり、右足をビンディングペダルに嵌める。
準備運動の意味でゆっくりと脚を回して港を出ようとした時、「あ、忘れてたわ!」。
Nさんに車のキーを返さなければ。

つづく

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