(609)千博屋の唐揚げ弁当を目的とした淡路島ライド~洲本城~

9時3分。

ロードバイクのハンドルに手を掛け、天守を目指してゆっくりと歩く。
「次の角を曲がったところかな?」。
「まだ?もうかなり近くまで来てるはずなんやけど」。
洲本城天守は、過去に一度見ている。
なのに膨らむ。
期待が膨らむ…わけだが、なかなかたどり着けない。
石垣に囲まれた細い道を進み、そして何度か迂回させられ、「城はやっぱりこうじゃないとなぁ」と思う。

もともと俺は城が好きで、城巡りの旅を何度も経験している。
ただ、ロードに乗り始めてからは、暇な時間をロードに費やすことが少しずつ増え、城に行く機会が減った。

「久々に来たらええもんやなぁ」。
「やっぱり城は萌える」。
少し歩いた後、立ち止まって写真を撮る。
そして、また少し歩いては写真を撮り、徐々に心が満たされていく。

9時5分。

「えぇ…、この階段を上るんか…?」。
目の前には、大石段。
「勘弁してくれよ…」。
何百段も続くような、いかつい階段ではないが、石の階段なので表面はガタガタ。
SPD-SLシューズを履いている俺にとっては、「ただでさえ足下が不安定やのに、不幸なことに石段かよ…」だ。
また、おまけにロードを担いで上らなくてはならない。
「おい、何でさっきの駐車場にロードを停めとけへんかってん?」。
「それはでけへんわ。盗難の恐れがあるやん」。
「アホか?誰が盗むねん?そもそも、人なんかひとりもおらんやろ?こんな時間に城に来るやつがどこの世界におるんや?」。
「俺や」。
脳内で会話。

会話終了。
ぐずぐすしていても仕方が無い。
右手でトップチューブを持ち上げ、右肩に引っ掛かる。
「そんじゃ、上りましょか」。
一段一段、慎重に上る。
と、途中でコツがわかった。
石段と言っても、全てが石で構成されているわけではない。
石の付け根には土の部分がある。
クリートでその土の部分を踏むと、SPD-SLシューズがスパイクとして機能する。
「うっわ。俺、頭良すぎるやろ」と思ったが、「帰りはこれを下りるんか…」。
それに気付き、テンションが一気に下がった。

9時8分。

「まだ暗いうちから家を出て、明るくなって由良から出発して、走って登って…やったけど、この石段が一番疲れたわ…」。
上り終えてロードを押して歩くと、天守が視界に入った。

この洲本城天守は、模擬天守。
歴史の面影を感じられるものではない。
ただ、模擬天守としては日本で一番古いらしい。
何か、値打ちが無いような、あるような。

天守周辺にある売店は、まだ閉まっている。
観光する人もいない。
ロードを石垣に立て掛け、俺は立ったままぼけっとしていると、鳥の鳴き声がよく聞こえた。

つづく

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