(612)千博屋の唐揚げ弁当を目的とした淡路島ライド~心の中で~

10時50分。

28号線を内陸部へと進む。
「見慣れた景色やわぁ」。
アワイチを走るロード乗りにとって、28号線は岩屋~洲本間の海沿いの道…という印象があるだろう。
しかし、ショートカットばかりしている俺にとっては、洲本から内陸部への景色が馴染み深い。
何の自慢にもならないが。

車道も歩道も広く、交通量まで少ないため、走りやすすぎる環境。
自然に脚が回る。
ふと道沿いに目をやると、ぽつぽつと大型店舗が並び、その背景は緑。
鼻炎の俺でも空気が美味く感じられた。

11時00分。

「お、ローソンが見えてきたわ」。
「ローソン前を曲がらなあかんな」。
千博屋がある福良方面へ進むため、俺は交差点を左に曲がり、「はぁ~~。忘れてたわぁ」。
下を向く。
ここから先は車道が狭いのだ。
また、その影響なのか交通量が増え、ロードでは走りにくい。

なるべく無心になるよう自分に言い聞かせ、ひたすら脚を回していると、視界の隅っこにロード乗り。
歩道を走る兄ちゃん。
「うん、気持ちはわかるよ。車道、怖いし走りにくいから歩道に逃げたんやろ?」。
「でもなぁ、歩道は歩道で狭い。それにガタガタやから、どっちみち走りにくいよ」。
アドバイスを送る(心の中で)。
返答は無い。

11時5分。

真横をすれすれに走り過ぎる車にヒヤヒヤし、また同時に「俺って邪魔ですよね…?すみません…」。
心の中で頭を下げ、荒い路面をチェックしつつクランクを回していると、ストレスが蓄積された。
「もうヤケクソや」。
下ハンを握り、全神経を脚に集中。

と、前にロード乗りの男。
時速20㎞前後か。
「おいおい、遅いって」。
今の俺は小宇宙(コスモ)を燃やしているのだ。
「遅いねん。邪魔やわ」。
イライラ…、イライラ…。
ただ、追い抜きたいが、真横を車がびゅんびゅん走っているために追い抜けない。
「ほんま、遅いって。頼むで。俺は唐揚げ弁当買いに行かなあかんねん。まぁ、全然急いでへんけど」。

走りながら男の背中に目を向け、文句を言う(心の中で)。

「脚をもっと回せよ」。
「集中!集中!」。
セコンドになった気分で男に指示を送る(心の中で)。

普段、知らないロード乗りに抜かされまくっている俺にとって、久々にマウントを取れる機会が訪れたのだ。
「おいおい、そんなにちんたら走ってたら、次の信号に引っかかるやろ!」。
調子に乗って檄を飛ばし続けた(心の中で)。

が、「ほんま、頼むで…」。
信号に引っかかった。
「俺はなぁ、この道を何度も走ってるから知ってるけど、今おるところは走りにくい区間やねん」。
「だから、さっと通り過ぎようよ。さっと」。
信号待ちの間、男の背中に語りかける(心の中で)。

と、「あら?男の前に誰かおるわ」。
ハンドルを握りつつ、振り向いて男に何か話し掛けている女性。
「あ、カップルで走ってたんや…」。
おそらく、男は前を行く彼女のペースに合わせてゆっくりと走っていたのだろう。
「何か、調子こいてすみません」。
俺は男の背中に目を向けて謝った(心の中で)。

つづく

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