(615)千博屋の唐揚げ弁当を目的とした淡路島ライド~前を走るロード乗りを心配する~

12時19分。

唐揚げ弁当をたいらげ、心も腹も満たされたが、同時に眠気に襲われた。
そもそも、釣り人のNさん(50代 男性)と行動を共にすると、早朝に出発するせいで体に無理を強いる。
ロードバイクで走る以外の負担を感じるのだ。
「疲れたわぁ。30㎞ぐらいしか走ってへんけど」。
「眠たいってぇ」。
目を閉じてうなだれる俺。

ベンチの上で横になり、ぐっすり眠りたい。
ただ、ベンチは車道の脇に設置されているため、通り過ぎる車の運転手から「こいつ、アホや」と思われるだろう。
それは、誇り高き俺のプライドが許さない…が、「別にええやん。知り合いでもない人なんやから、アホと思われてもええやろ」。
プライドが許した。

空になった弁当の容器をバッグに詰め込み、ベンチに横たわる。
陽射しが強く、寒さも感じない。
隣で横たうパトラッシュの肩に手を掛け、間も無く天子が舞い降りてくる。
パタパタパタパタ…。
と、そんなシチュエーションが整ったわけだが、「あかんわ…。起きな…」。

由良港でNさん(50代 男性)が俺を待っている。
釣りをしながら。
待ち合わせ時間は15時。
時間にはまだまだ余裕がある。
しかし、一度眠りにつくと10時間ぐらい寝てしまいそうだ。
「起きろ、俺」。
目を開き、ボトルの水で顔を洗った後、なんとかサドルに股がった。

11時33分。

28号線を北に向かう。
往路でも走った、車道が狭く、歩道も走りにくい区間に突入。
「毎度毎度のことやけど、ここ、ほんま鬱陶しいわぁ」。
「5㎞ぐらいの地下道でも作ってくれよ」。
ふて腐れながらクランクを回す。

軽い渋滞の中を走っていると、「運転手から見て俺は邪魔なんやろなぁ」。
そう思い、でこぼこの歩道に上がった。
「走りにくっ」。
ストレスを感じつつ少しずつ北へ進む。
と、車道を激走するロードが俺の真横を通り過ぎた。
一瞬しか確認できなかったが、白をベースに赤のラインが入ったフレーム。
「気持ち良さそうに走ってたなぁ」。
「それにしても、車、怖くないんかな?」。

12時39分。

鬱陶しい区間が終わった。
「えっと、あのローソンの前を右に曲がって…と」。
ここからは洲本の中心部へ向かう。
道は広くなり、走りやすい。

12時40分。

緑に囲まれた、緩やかな坂道。
登りが嫌いな俺でも余裕を持って進めるレベル。
「あとちょっと行けばトンネルがあって、その先の川沿いの道を…」。
ルートを考えながらクランクを回していると、少し先にロード乗り。
「あ、白のフレーム。さっきの人か?」。
「遅いよな、この人。俺より登りが苦手なんかな?」。

俺よりも登りが遅い男。
あぁ、初めて巡り会えたのかも知れない。
徐々に感動が込み上げてきた。
「俺でよかったら教えてあげようか?『登りのテク』ってやつを」。
そう心の中でささやきながら、男の背中に目を向ける。

とまぁ、優越感に浸っていた俺だが、「この人、なんぼなんでも遅すぎへんか?」。
少し心配になってきた。
サドルに股がり脚を回す男の後ろ姿をよく見ると、挙動不審と言うか、どことなくぎこちないような。
「もしかして、持病を持ってる人かな?」。
「それやと、ちょっとやばいよな。とりあえず『大丈夫ですか?』って声掛けてみよう」。
俺はダンシングで男との距離を一気に詰めた…ら、男は草むらにロードを寝かし、立ちション。

「はぁ?心配して損したわ」。
「てか、さっきローソンあったやんけ。便所、借りろよ」。
立ち小便をする男の背中をにらみつけた後、俺は前を向いた。

つづく

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