(619)千博屋の唐揚げ弁当を目的とした淡路島ライド~初対面の人と話す~

14時10分。

カッカッカッ…カチャカチャカチャ…。
SPD-SLシューズを履いて、狭い桟橋を歩く。
足元が不安定で、「こけたら海に落ちるやんけ…」。
精神的にも不安定になった。
また、やめておけばいいのに、ついつい海に目を向けてしまう。

「何や、あれは?」。
足を止め、水面を見詰める。
背中が黒くて大きな魚の群れ。
「こんなもん、ちまちま釣らんでも、網ですくったらなんぼでも取れるんちゃうか?」。

桟橋の突き当たりまで歩くと、釣竿を握るNさん(50代 男性 俺を車に乗せて淡路島へ連れてきてくれた人)がいた。
「お疲れ様です」。
「お疲れ様です」。
「あの、ロードバイクを車に積みたいので、車の鍵を貸してもらえますか?」。
「はい、どうぞ」。
鍵を受け取り、しばらく世間話。
釣りが不調である旨の話(言い訳)も聞く。
「そういや、あそこに大きい魚の群れがいましたよ」。
「あぁ、それね。どこにでもいますよ。ボラでしょ?」。

14時20分。

車にロードを積み終え、しばらくは助手席でぼけっとしたが、「暇やわ」。
再度、桟橋を歩きNさんの元へ。
「釣りは15時に終わる予定なんですよね?」。
分かりきったことを聞く俺。
「はい、15時に終わります。もうね、この時間になると、あまり長居しても釣れそうにないですから」。
俺は地べたに座り、なんとなく港町を眺める。
風が強い。
「あぁ、自然の香が体全体に染み渡るようだね」。
自分に酔いしれていると、「お疲れ様です」。
眼鏡を掛けた知らない人が登場。

14時40分。

「誰や?この人は…」。
身構えつつ眼鏡を観察していると、Nさんと親しげに話している。
「調子はどうですか?こっちはねぇ…」などと。
会話に耳を傾けて、「あ、この人か」。
理解した。
以前、西宮に住んでいたが、今は仕事の関係で淡路島に住むNさんの釣り仲間。
「はいはいはい」。

「今日は自転車でこの辺りを走ったんですよね?」。
急に話し掛けられて、ドキッとする。
「やばいな」と。
俺はコミュニケーション能力に自信が無い。
「落ち着け俺。会話を成立させるのだ」と自分に言い聞かせ、「はぁ、まぁ、50㎞ほど走りましてね」と答えた。
「え!?50㎞も!」。
ロードに乗って50㎞走っても何の自慢にもならないが、ロードに乗らない人にとっては驚異的なのだろう。
「はい。50㎞ほど。まぁ、大したことないですよ」。
「どこまで走ったんですか?」。
「まずは洲本城に行ってですね…」。
「え!?あんなに高いところまで、自転車で登れたんですか?」。
洲本城までの登りは何回か前の記事にも書いたが、これも自慢できるものではない。
一応、「まぁ、余裕っすね」と、やや勝ち誇った顔で答えたが。

「洲本城の後は、どこに行ったんですか?」。
「唐揚げ弁当を買いに、福良の手前の方に」。
「あぁ、唐揚げの○○ですか?」(○○の部分は聞き取れなかった)。
「えとねぇ、千博屋です」。
「あぁ、千博屋ね。ありますね」。
「大きくて美味しい唐揚げでしたわ」。

なんとか無難に会話を成立させていると、「そろそろ引き上げる用意をします」とNさん。
助かった。
「わかりました。じゃあ、俺、車で待ってますわ」。
眼鏡の人に一礼し、車に向かって狭い桟橋を歩く。
一仕事終えた気分だ。
カッカッカッ…カチャカチャカチャ…。

つづく

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