(620)千博屋の唐揚げ弁当を目的とした淡路島ライド~帰り道~

15時5分。

釣り道具を車に積み、Nさん(50代 男性 車で俺を淡路島に連れてきてくれた人)は運転席に座った。
「それでは、帰りましょうか」。
ハンドルを握るNさん。
車は颯爽と由良港の駐車スペースから出る…はずが、前後に止められた車が邪魔のようで、少しバックしてはハンドルを回し、少しバックしてはハンドルを回し…。
「なんか面倒くさいことになってるみたいやな。バックしすぎたら海に落ちるしなぁ。ほんまに大丈夫か?」。

そう不安に感じていると、窓の外から「オーライ、オーライ」。
俺は「誰や?誘導してくれてる人がおるな」と、声のする方に顔を向けた。
「あ、さっきの眼鏡の人やわ!」。

15時10分。

28号線を北へ走る。
「高速は岩屋から乗りますね」。
「はい」。
ぼんやりと窓の外に目をやる。
バス停の周辺に民家がぽつぽつとあり、その裏には山が見えた。

前を向くと、28号線の道路が続く。
「俺、数時間前にこの道を走ってたんやなぁ」。
「同じ道やのに、ロードバイクに乗って見る28号線と車から見る28号線は、何か違う気がするよなぁ」。
とまぁ、ちょっとした違和感を覚えた時、Nさんが口を開いた。
「今日はどれぐらい走ったんですか?」。
「50㎞ほどですかねぇ」。
「50㎞!?すごいですね」。
ロードに乗らない人にはわからないだろうが、ロード乗りにとって走行距離50㎞など何の自慢にもならない。
「で、どこまで走ったんですか?」。
「はぁ、まずは洲本城に向かって進み…」。
話しながらながら、かなりの違和感を覚える。
「あら?ついさっきも、どこかで同じ話をしたような…」。

15時25分。

カーステレオから流れる、まったく知らない曲。
特に興味も湧かず、ただただぐったりしながら前に目を向ける。
「何か、混んできたな」。
洲本から北へ上がる辺りから交通量が増えたようだ。
「ロードに乗ってたら、たまったもんじゃないよなぁ」と思う。

この日も早朝に出発したせいか、眠たくなってきた。
「悪いけど眠らせてもらいますわ。すんません…」。
心の中でNさんに謝り、まぶたを閉じようとしたタイミングで「krmさん、どこか寄りたいところはありませんか?」。
「寄りたいところ…ですか?」。
「帰ってからの予定は特に無いので、どこか寄ってゆっくりするのもいいかなと」。
正直、「そんなんいらんから、さっさと帰りたいわ」だ。

俺としては、旅において、やることをやればさっさと帰りたい。
一刻も早く家に着き「実話ナックルズ」を熟読したい…ではなく、仕事のことで気になっていることがある。
頭の中では、「寄り道なんかせんでええわ」だ。
ただ、それをストレートに言ってしまうと、Nさんに悪い気もする。
「そうですねぇ。東浦なんたらパークってところぐらいですかねぇ」。

16時10分。

「かえって迷惑なので、却下してくれていいんですよ」と思い、そして強くそう願ったが、Nさんは「道の駅 東浦ターミナルパーク」の駐車場に車を止めた。
「うっわ。ほんまに寄ってもうたで…」。

つづく

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