(633)ロードバイクと共に三重県へ行こう~俺の心は神宮へ~

10代の頃、歴史シミュレーションゲーム「信長の野望・戦国群雄伝」をプレーしたのが切っ掛けで、藤堂高虎という歴史上の人物を知った。
そのせいで、肖像画を見てもしっくり来ず、ゲームのグラフィックが目に浮かんでしまう。
彼は築城の名手と言われたひとりで、俺は彼の手掛けた城のうち、今治城、伊賀上野城、篠山城を訪れているが、今回の津城は何か趣を感じない。
城らしく、堀も石垣もある。
ただ、俺の中で少し豪華な近所の公園…のような。
まぁ、藤堂高虎像を見て「信長の野望のイメージとは少し違うな」と思いつつも、一応は津城を訪れたな気分になった。

さて、予定としてはこれから伊勢市へ向けて走る…わけだが、城跡から出ようとすると「あんなのもありますよ」とSさん(40代 男性 三重県在住の同行者)。
「あんなのってどんなの?」。
Sさんが指差す方に目を向けると、「おー、櫓があるやんけ!」。
やっと、「城巡りをしている」という実感が湧いてきた。
ジャージのバックポケットからスマートフォンを取り出し、「桜が邪魔やわ」と思いながら櫓を撮影。
「では、ちょっと行ってきますわ」。
Sさんにそう伝えた後、石垣にロードバイクを立て掛け、俺はビンディングシューズで石段を賭け上がった。
櫓をもっと間近で見たい。

津城の門をくぐってから堀や石垣といった遺構を目にしたが、この櫓こそが津城の顔なのかも知れない。
まぁ、正直なところ天守に比べると寂しい。
ただ、当然、櫓としてなら十分に存在感がある。
「とりあえず、もう1枚いっとこか」。

俺とSさんのどちらが言い出したか忘れたが、「トイレに行きましょか」となり、用を足してからトイレの前のベンチに座る。
そして、何かを話し合った。
が、何を話し合ったかは、もう忘れた。

「さよなら、高虎」。
津城を後にし、俺はSさんの後ろに付いてクランクを回す。
目的地の伊勢へ向かうため、まずは津市の市街地を進み、海沿いの道に出る…わけだが、気持ちが落ち着かない。
「サイクリングなどどうでもいい」とすら思える。
と言うのも、この日、3月27日はプロ野球の開幕2日目なのだ。
阪神が気になって仕方が無い。

前日の開幕戦は、神宮球場でのヤクルト戦。
ボロボロの守備と四球の多い藤浪でもなんとか勝てた。
ヤクルトのエース小川も悪くはなかったため、勝ててラッキーだと思う。
しかし、喜んでばかりはいられない。

2戦目、ヤクルトの先発は田口。
開幕前に巨人からトレードされたピッチャーだ。
阪神ファンの俺としては、田口には嫌な印象がある(俺個人として何か嫌がらせを受けたことはないが)。
巨人の田口には、「こいつ、どうしたら打てるねん?」というぐらい抑え込まれた(俺個人ではない。阪神が)。
「阪神が田口を苦手にしていることを知った上で、開幕2戦目に田口を持ってくるなんて、ヤクルトはやらしいことするねぇ」と皮肉を言いたくなる(心の中で)。

スマホで時間を確認する。
試合開始は1時半後。
やきもきする。
と、前を走るSさんがハンドサインを出した。
停止。
「この道が国道なんですが、伊勢までのルートは…」。
Sさんは親切に説明してくれたが、もう既に、俺の心は神宮へ飛び立っている。

つづく

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